キャプテンと同一世界線の物語!にコメントする
プレイボール
ちばあきお漫画を動揺させる御馳走という存在
プレイボール ちばあきお
影絵が趣味
影絵が趣味
夏の甲子園の県予選がはじまっているので、性懲りもなく『プレイボール』を読み返している。 語弊を恐れずにいえば、ちばあきお漫画の魅力は味気のなさにあると思う。野球に熱心すぎるあまり、ひたむきすぎるあまり、本気で打ち込むあまりの味気のなさである。「勝利の味をしめる」という言葉があるが、『キャプテン』にしても『プレイボール』にしても、負け試合はもちろんのこと勝ち試合においてもどこか苦い雰囲気が拭えないのである。『キャプテン』のイガラシ時代の夏の決勝戦、西の強豪・和合中との雨の決戦はどうだったか、全国制覇を成し遂げたというのに不思議なまでのあの味気のなさは。 ところが、そんな試合に勝ってまで味気のないちばあきお漫画において、奇妙に味気のある数コマがおよそ一巻に一度ぐらい落とし穴のように潜んでいる。それすなわち御馳走の時間である。 田所先輩の代こそは元々が弛んでいるので、まだ御馳走はみられないが、まさしく田所先輩たちが引退して谷口が次のキャプテンに指名される日から落とし穴のような御馳走がひっそりと潜んでいる。薄汚い部室にテーブルを囲い、それぞれの席には簡易的ながら紙のナプキンが敷かれて、その上に可愛らしくお菓子やフルーツやジュースの瓶が乗っている。野球一筋のこのマンガにおいて、なんと奇妙で戦慄さえ憶えかねない一コマであることだろう、淡々とただひたすら野球に打ち込むばかりのコマの連なりのなかで不意に挿入されるこの紙ナプキンの上の御馳走たちはスリリングとさえいえないか。 この送別会の御馳走を先がけに、新入生の歓迎会ではふたたび囲んだテーブルに紙ナプキンが敷かれて、出前の兄ちゃんが蓋付きのカツ丼を運んでくる。大会の谷の日には田所さんが激励にアイスクリームを紙袋にたくさん詰めてもってくるし、鰻丼かと思いきやカツ丼の上を御馳走してくれるし、熱戦の翌日の休養日には丸井が谷口家を訪ねるさいのお土産として鯛焼きを持参して、しかもそれらは丁寧に紙の上にあけられる。そして極みつけにはOB会の発足パーティー、またしても薄汚い部室にてテーブルを囲み、もはや簡易的な紙ナプキンではなくテーブルクロスが敷かれ、御馳走に加えて瓶ビールまでが用意され、スリリングはさらに加速する。ここで注目したいのはこれらが単なる食事ではなく、それ以上に丁寧に格式張っているということにある。ちばあきお的マンガ世界において、彼ら野球少年たちは基本的には野球という社会のなかに閉じた存在である。その閉じた世界に不意に出現するイロモノめいた別の社会(すなわち御馳走という格式)はあまりに滑稽であり、その場を動揺させずにはいられない。しかも、その御馳走が部活の聖地ともいうべき部室にひろげられたさいには事尚更である。 味気のないちばあきおマンガが不意に彩りをみせるとき、その場は途端にスリリングに動揺しはじめ、物語に緩急と躍動とをもたらしているらしい。
イセグレ 異世界チート無双 俺TUEEE系イキリ転生者に かませ犬にされ続けたエリート騎士、超グレる。
アンチ異世界転生! アンチトラック!! #1巻応援
イセグレ 異世界チート無双 俺TUEEE系イキリ転生者に かませ犬にされ続けたエリート騎士、超グレる。
兎来栄寿
兎来栄寿
異世界転生して、努力もなしに「俺TSUEEEEE!!」してハーレムを築き上げるのは陰キャの希望であり夢。 しかし、そんな夢の下で泣いている者もいるという所にスポットライトを当てた物語です。 幼いころから努力に努力を重ねて強くなり、高潔な魂で正義と平和を愛して人々のために戦い続けてきたレトリバー王国の騎士ポメラ。彼が、続々と異世界から現れる転生者のかませ犬にされ続け、努力は決して裏切らない……などということはなく何の努力もしていない者たちが与えられたものだけで無双してすべてをほしいままにしていくこともあるという、残酷な現実を突きつけてくる物語です。 結果、大いにグレてしまったポメラが逆に現実世界に乗り込み、異世界転生の円環を阻止していくという切り口が面白いです。努力なしに強くなる主人公がメインストリームとなっていた昨今において、カウンター的な作品となっています。 「オレはなァ トラック見ただけでイライラするんだよ!! テメェらは一体今まで… どんだけの人間たちを異世界転生させてきたんだ ボケェエエエエエ――――!!!!」 と、木刀でトラックを叩き壊すシーンは声を出して笑ってしまいました。その数ページ後に更に新しいトラックが出てくるところも最高です。何なら、事あるごとに出てくるトラックの天丼でずっと笑います。 チャンピオン系作品なのに、全体的にマガジン系ヤンキーマンガの雰囲気を纏っているところも好きです。 主人公の名前がポメラなのも、ポメラニアン好きとしては応援してくなるポイントです。 異世界転生させるトラックを破壊するカタルシスを味わいたい方にお薦めです。
ナヴィガトリア
カバー下がかわいいです #1巻応援
ナヴィガトリア
兎来栄寿
兎来栄寿
「ナヴィガトリア(最高指導者)になれなければ、死あるのみ」 というサスペンス性を軸に、独特の設定を持ったSF学園ストーリーです。単行本の表紙も不思議な感じですね。 小説も映画も音楽も芸術も自由恋愛も禁止のムジンコ共和国で生まれ育った鳳凰學(ほうおうまなぶ)が、初恋の幼馴染ヒナと平和に穏やかに暮らせる国を作って迎えに行くことを目的に、各国から100名の若者たちが入学しナヴィガトリアを決める地球初の植民星のデメテール学院で頂点を目指す物語です。 同じくナヴィガトリアにならねばならない理由を持つデメテール人で成績1位のナヴィや、絶対に裏があって怪しいアイダン、最悪の侵略国家ドンモス大帝国の李虚淡(リコタン)、他にも個性溢れる各クラスのリーダーたちなどどんどん登場してくる濃い面々によって一触即発の学園生活が描かれていきます。 ムジンコ共和国人である主人公は、他の有力な国々に比べると見劣りする人材ですが、それでもジャンプらしく愚直な努力を重ねていくことで勝利を目指していく姿は熱いです。世界設定やキャラクターは尖っていますが、根底にはシンプルで強い動機があるのが話への乗っていきやすさに繋がっています。 特殊な課題なども出されていきますが、それをどうやって乗り越えていくのか。果たして、ヒナとの安寧の日々は訪れるのか。 余談ですが、単行本のカバー下に大量に描かれた動物たちがとにかくかわいいです。こっち系統に特化した作品も見てみたくなります。
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