やぶさかではございません
好意を信じられないアラサー女性のままならない恋模様 #1巻応援
やぶさかではございません Marita
sogor25
sogor25
中学2年の時に告白されて付き合った相手から1週間でフラれたことで、相手からの好意を信じられなくなってしまった主人公の不思議 麻衣。 恋愛への憧れは持ちつつも心に空いた穴を埋められないままアラサーになってしまった彼女は、 ひょんなことから店員も客も店内で声を発しないというコンセプトの「サイレントカフェ」で働くことになります。 そこで麻衣が出会った4歳年下のスタッフ・上下 亮は、次第に麻衣に対して好意を抱き始めるのですが、 麻衣の繊細さを察知して慎重にアプローチをしようとした結果、 「いつも恋愛が上手く行かないから」という謎の言い訳と共にちょっと変わった提案をしてしまいます。 他のカフェの店員たちもキャラが濃くてかつ魅力的で、群像劇的な雰囲気も醸し出していますが、 その中で、クールな見た目ながら麻衣との接し方に手こずる亮と、 亮の好意をあっさりとは受け止めてくれない麻衣という2人のままならない恋模様が描かれる作品です。 1~2巻同時発売で一気に期待値を上げてくれるので、1話で気になった人は2冊まとめて買うのをオススメしたい、そんな作品です! 2巻まで読了
201号室のおとなりさん
大学生ヒロインの純情な感情 #1巻応援
201号室のおとなりさん 日向きょう
兎来栄寿
兎来栄寿
『ブラザー・トラップ』の日向きょうさんが送る新作です。巻末には、『ブラザー・トラップ』の撮影現場へ訪れた際のレポートマンガも描かれており、非常に幸せな実写化であったことが伝わってきます。 『201号室のおとなりさん』もまた、良い感じに心を擽られる大学生×社会人のラブコメです。 ヒロインの美和、通称みーすけは ・弟妹が多く裕福ではない家庭を助けるために、大学ではしっかり勉強してちゃんと稼げる仕事に就きたい ・同世代が興味津々のお洒落や恋愛などに全然興味がない ・マイノリティな趣味のマスコットキャラクターが好きで常々珍妙な柄の服を着たりスタンプを送ったりする など、朴訥とした新大学1年生。大学時代、身近にもこういう子いたなぁと懐かしむと共に、性別が違うので事情も違うとはいえ後ろの2つは個人的にも共感を覚えるところです。 しかし、そんな彼女をかき乱す存在が幼馴染でもあり、隣人であり大家代理でもある社外人の千暁(ちあき)。生活力に乏しく、女性関係へのだらしなさを感じさせる再会時の印象が、色々なイベントを経て徐々に覆っていきます。 容姿端麗で外面も良くモテモテである千暁は逆にグイグイ来ない美和のような子の方が落ち着ける(ある意味で「おもしれー女」)というところがポイントとなっており、美和もそのことを徐々に理解しながらも自分としても初めて抱く気持ちの芽生えに翻弄されていく様子が見どころです。大学生になってからの初恋というのも乙なものですね。 美和と奇跡的に趣味が似通って友達になる同期の子や、同じアパートの住人たち、また1巻最後で登場する新キャラの子など脇を固めるサブキャラたちも魅力的で良い群像劇となっていきそうです。 ズボラな面もありつつ頼れてカッコいい男性像を見せながらも、その裏には陰をも感じさせる千暁との関係は周りを巻き込みつつどう展開していくのか。そして、気になるきぐるみあにまる同好会の活動内容とは。 本作も順調に進めばメディア化して人気を博して行きそうな盤石感を覚えます。ピュアで真面目なヒロインのラブコメを読みたい方にお薦めです。
君ノ声
異能夫婦の想いを伝える物語
君ノ声 森永ミク
六文銭
六文銭
うまれつき他人の心が読めてしまう主人公が、 唯一読めないのが縁談相手の令嬢で、のちに夫婦となる女性。 この女性は声も出せないため、何を考えているのかわからず戸惑う主人公。そして、またこの女性にも密かな能力として心が文字として視えるという特殊能力を持った夫婦の話。 特に、人の心が読めることで、周囲の人たちの悪意にさらされていたこともあり、性格がヒネくれてしまった主人公。 その力を利用し商魂たくましくビジネスで成功をおさめたが、常に疑心暗鬼で、他人を信用することができない、なんとも悲しい状況。 そこに、全く心が読めない、かつ声も出せないから何を考えているかわからない女性が現れ、人生最大級に戸惑います。 いつもなら、それが善であれ悪であれ、手にとるようにわかる人の心が、彼女に対しては全くわからない。 だからこそ、聞きたくなるし、知りたくなる。 不幸な境遇にありながらもけなげに生きる姿に、心が見えなくても思いが伝わり、二人は夫婦として生活することになる。 普段と勝手が違うことで誤解を重ねながらも、不器用に一途に思いあう夫婦の形は、異能を通して、本来の人のあるべき姿を描いているようで、じんわり響きました。 また、奥さんのほうも、実は心が文字として視える能力があるのですが、言葉を発することができないので、主人公はわかっていない状況。 声を発することができなくても気持ちが伝わり、奥さんがそっと彼の悲しみに寄り添う、この姿もまた良いですね。 お互い特殊能力がありながらも、一方で制限されているからこそ、描ける表現だと思います。 奥さんのほうが声を出せるようになれば、主人公も彼女の心がみえるようになるそうで、今後どうなっていくのか、特に二人の想いが最後どうやって伝わるのか楽しみです。
さんさん桜
異文化の熱が伝統文化に風を起こす
さんさん桜 くらの
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ
日本舞踊を学びに来た外国人と、そのにわか師匠のやり取りで、日本舞踊を美しく・カワイク紹介する漫画『さんさん桜』。内容については、たかさんが先に書かれたクチコミが、日舞の経験者の視点から興味深い紹介をされていました。 https://manba.co.jp/topics/24511 私はこの作品から「外国人が日本文化に携わる意義」について考えました。 たかさんも書いてらっしゃいますが、この作品では外国から学びに来た子が、とても「楽しそう」で、それがいいんですよね。その楽しみ方、夢中になる目に、一度日舞を捨てた青年は魅せられ、苦しみながらも再び日舞に向き合い始める。 熱烈な外国人の「日本文化の楽しみ方」は、例えば陶芸を描いた『へちもん~信楽陶芸日記~』や、茶道の作品『ケッコーなお手前です。』にも描かれていて、伝統の本質を知り・学びつつも屈託のない、それでいて熱心な楽しみ方が、どこか鬱屈としている「伝統の継承者」を救う。 伝統芸能の内部にいた時に、なかなかその美しさに気付けなかった、というたかさんの告白は、結構重要な事を指摘しておられると感じます。 伝統文化を生きる伝承者達が、見失ってしまう「伝統文化=自分の良さ」を、外部の人から教わる事がある。外から熱気を帯びて、その文化が好きだ!と飛び込んでくる人に、かき混ぜられて再び吹く風がある。そんな爽やかさが、この『さんさん桜』、そして例に挙げた『へちもん~信楽陶芸日記~』『ケッコーなお手前です。』などにも、確かにある。 異文化からの熱と、それに救われた伝統文化、という形を描いた3作品。そこから日本人の私も、自分達の文化の継承について……本質的な楽しさを知り、誰かに伝えることの大切さを、色々考えさせられました。
マイ ベイカー
全2巻に仕事と恋がギュッと詰まったベーカリーラブ!
マイ ベイカー らくだ
天沢聖司
天沢聖司
今夏の漫画原作メディア化作品をチェックしていたところ、表紙だけは知っていたこの『マイ ベイカー』の名があり、Kindle Unlimited作品だったので読んでみました。 ちっちゃいけど綺麗でパワフルな店長と、でかくて寡黙な6歳年下の新人バイト・北くん。 憧れる人は多いものの、実際は5時起き21時就寝、何十kgもある粉を運び、熱い天板でやけどし、食品を扱うため衛生管理も厳格で超過酷な仕事場である『パン屋』が舞台。 ガタイのいい北くんは、見た目に反してパンを可愛く仕上げる才能があり、しかも実は店長のことを昔から知っていて…というあらすじ。 https://twitter.com/comicgene_line/status/992238458725789697?s=20 そこで2人の距離が縮まっていくわけですが、この過程がすごくリアル! 絵柄は少女漫画っぽいですが、流石女性漫画だけあって恋の描写がくどくない。いい…! 学生が主人公の少女漫画は頻繁に『トゥンク』したり『カアァァ』ってなったりして、初恋に揺れる感情にページを割きがちですが、働く大人の女性(しかも店長)のお話なので、ラブは見せ場を絞って投入している程度に留めていて、そこが大人の恋愛という感じがしていい。 というか、どちらかというとトゥンクしてるのは北くんの方ですね…それもまたいい。 混入を防ぐため販売員でもシャープペンの使用はNGとか、蛍光灯替えると粉が降ってくるとか、焼きたてのパンを手で触るやばいババアがいるとか、パン作り以外の仕事の苦労も描かれていてとても勉強になりました。 ちっちゃい体でガンガン重たい荷物を運び、火傷にもへこたれずいつも笑顔で働いている店長。「ああ、仕事に情熱がある人ってこうだよなぁ」と、清々しい気持ちになれる素敵なお仕事ラブです! (画像は『マイ ベイカー』らくだ1巻より。このクリームがコマをまたぐ演出めっっちゃ好き)
ほしとんで
セリフや表情でピンボールしている俳句漫画
ほしとんで 本田
名無し
絶妙に面白かった。 「ガイコツ書店員 本田さん」を読んだときから 絵もセリフも面白いなあ、とは思っていた。 「ガイコツ~」では主人公がガイコツキャラだったからか、 基本的な表情は一定で、なのに感情の機微がすごく 伝わってくるのが印象的だったが、 今回は普通の顔のキャラなので、当たり前だが 表情が物凄く豊か。 なので感情というか心境がさらに伝わってくる。 全体的な絵も独特だし、セリフはあいかわらず秀逸。 「だれがそんなうまいこと言えと」 と思ってしまう面白セリフが連発で出てくる。 上手い会話のやり取りを「会話のキャッチボール」とか 言ったりする。 この漫画も会話を主にストーリーが進んでいくような漫画だし、 上手い会話をしているな、とは思ったが けしてキャッチボールはしていないなと思った。 言葉をキャッチボールのように互いに相手の胸元に正確に投げ、 聞くほうは脇をしめてガッチリとキャッチして、とかしていない。 各キャラが皆でピンボールをしている感じだ。 かつてゲームセンターに必ずあった、 パチンコのように鉄球を弾いて派手な音や光を楽しむゲーム。 言葉をピンボールのように結構な固くて重い弾と化して 色んな角度から緩急をつけて互いにあらぬ方向に 弾き飛ばしあいながらストーリーが進んでいく。 その様からはまさにピンボールゲームを眺めているような 楽しさを感じてしまった。 扱っているテーマは、地味の代表のような 「俳句」なんですけれどね。 で、そんなピンボールみたいな感じの、 読んでいて頭がグワングワンしてしまうような 振幅の激しいセリフのやり取りに翻ろうされるのだけれども 読み終えると俳句について「ああなるほど」と なんだか理解出来たような気になってしまう。 ほんとに妙な、凄く面白い漫画だ。