あらすじ

新潟の山際にある雪深い町、雨生町《まごいちょう》は、県境にあるため最寄り駅までバスで45分かかり、コンビニも無い。そんな雪国の小さな町で、祖父母と両親とごくごく普通の生活を送る高校一年生の五十嵐風花《いからしふうか》。ある日、風花が学校から家に帰ると神奈川県から来たという存在さえ知らなかった従兄妹の賢心とゆき枝がいた。
銀のくに 1巻
新潟の山際にある雪深い町、雨生町《まごいちょう》は、県境にあるため最寄り駅までバスで45分かかり、コンビニも無い。そんな雪国の小さな町で、祖父母と両親とごくごく普通の生活を送る高校一年生の五十嵐風花《いからしふうか》。ある日、風花が学校から家に帰ると神奈川県から来たという存在さえ知らなかった従兄妹の賢心とゆき枝がいた。
変声

変声

少年から大人に変わっていく思春期悩み、間違い、考えながらも少しずついろんなことに向き合っていく少年たちの物語――。文武両道でいつも自然と周りに人が集まる人気者の棚橋優征《たなはしゆうせい》。優征には誰にも打ち明けられない憧れている同級生がいる。それは、周りの友人たちが気にも留めないような目立たない少年、同級生の中川。ふたりはある出来事をきっかけに親しくなっていく……。表題作『変声』のほか「変声~それから~」「変声~蕾(つぼみ)」描き下ろし「モダンにめしませ」を含む4編を収録
サウダージの庭

サウダージの庭

【この庭には まだ 彼女がいる気がする】 男やもめの藤田源は孫の柚月とふたり暮らし。ある日、日課の散歩をしようと家を出ると、妻の遺した庭が荒れていることに気付く。彼女が生きていた頃はまったく興味のなかったガーデニングをはじめてみた源だが―― ガーデニングを通して亡き妻に思いを馳せ、思い出を巡り、自分を知っていく物語です。
変声

変声

いつも自然と周りに人が集まる人気者の優征には、人知れず強く憧れている同級生がいる。それは、周りの友人たちが気にも留めないような、目立たない少年・中川で――… 少年から大人に変わっていく思春期。悩み、間違い、考えながらも、少しずついろんなことに向き合っていく少年たちを描いた物語です。
銀のくに
雪国に降り積むあたたかな想い #1巻応援
銀のくに はやしわか
兎来栄寿
兎来栄寿
はやしわかさんについては以前に『変声』の際に書きましたが、その表題作「変声」を含んだ短編集が新たに『変声』として発売になると同時に、こちらの『銀のくに』と同時発売となりました。 新潟の外れにある雨生町を舞台にした、雪国のヒューマンドラマです。 通学にバス45分+電車で20分かかる学校に通う高校1年生の五十嵐風花の家に、体を悪くした伯父の息子で同じ高1の賢心と、小3の娘のゆき枝が神奈川から突然やってきてしばらく同居していくことになります。 思春期の少年少女にとっては、どちらの立場からしても大きな戸惑いが生じるできごとでしょう。最初はお互いにぎくしゃくしていますが、さまざまなできごとを通して少しずつ、雪がとけるような速度で歩み寄っていきます。 それは、何も風花と賢心の間のだけの話ではなく、環境の変化への不安から涙をこらえられないゆき枝と、一見すると偏屈に見える風花の祖父もそうです。自分も、小3のころにあった大きな環境の変化に上手く順応できずゆき枝のように心細い想いをしたなぁと懐かしい思い出が蘇りました。一方で、祖父の方としても折り合いがつこなかった息子の方の孫ということで、接し方が難しいのも大人になると解ります。 どうしたって、初めは潤滑にはいかない関係。社会にはざらにありますが、そこで何とか互いに歩み寄っていくことで世界は開けます。そんな様態を、いじましく尊い努力を上手く描いている作品です。 また、雪国での生活のさまざまな困難が克明に描写され、10cm雪が積もったらニュースになる東京や神奈川との違いを感じさせます。一方で、そういう風土であるからこそ受け継がれてきた伝統料理の「のっぺ」のような存在もあり、美味しそうで食べてみたくなりました。 年頃なので、当然同級生たちを含めて恋愛方面の話も出てくるわけで、そうした部分における展開もどうなっていくのか気になります。 読んでいて凍えるような銀色の世界で営まれる生活がまずベースにあり、その上で絡まり合って動いていく人間模様。雪国育ちの人は共感を覚えるところも多いと思いますし、そうでないところで育った人も楽しめる物語です。