理解できないものは怖い。 それは、人の本能です。 中でも一際恐ろしいのは、人間。 同じ人間であるはずなのに、全然理解できないという存在です。 種が同じであるというだけで、DNAが99.9%同じというだけで、中身はまったく別であると解らされずにはいられないとき、底知れぬ恐ろしさを抱きます。 自分もそうなっていた可能性があるのか。 それとも、根本的に違う存在なのか。 そんな恐ろしいと解っているものを垣間見たくなるのも、人の性質です。 こういった異端な人間を描いた作品は、その欲求を満たしてくれます。 本作を一言で表すならば 「当時15歳の自分と淫行をして逮捕された元カノの元教師が、17歳になった自分と一緒にいるために、引きこもりの父親と結婚してお母さんになろうとする話」 です。 何を言ってるのか解らないと思いますが、読者も解りません。 2年前に母を亡くした17歳の高校生・谷村秀吏(しゅうり)は、引きこもって何もしない父親に代わって6歳の妹ほのみの世話を含めた家事全般を担当している苦労人。彼と付き合っていた掛元沙愛楽(さあら)が、ある日突然秀吏に会いに来たことで、淫靡で激動の日々が動き出します。 とにかく、快楽主義で短絡的で幼稚ながらたまに怜悧な側面も見せる沙愛楽の得体がしれません。得体はしれないものの、美人でスタイルも良く思春期の少年には抗え切れない魔的な魅力があります。 引きこもりの父親も含めて「怪物」感がすごいですが、秀吏自身も端々から危うさを見せています。こんな家庭環境で、こんな遍歴で育った少年が普通でいられようはずもないのですが。ともあれ、怪物たちによって予測不能のサスペンスフルな展開が繰り広げられていき目が離せない作品です。 余談ですが、前作の『事件はスカートの中で』から引き続いて第1話の見開き扉絵がパンツだったのでデジャヴュを覚えました。筆者の趣味なのでしょうか。あるいは担当者の要望があるのでしょうか。ずみ子さんの描く「ヤベー奴」らにこれからも期待です。
兎来栄寿
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おれんちのかいぶつ
俺ン家の怪物 1巻
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