表紙を捲るとカバー袖に書かれている「続けるも辞めるも、どちらも地獄。」という文言が、重くのしかかってきます。 人を笑わせることが仕事である芸人が、裏で抱える笑えない現実。コントトリオ「ニュークレープ」のナターシャさんが、そのリアルを物語に込めて描いています。 芸人というテーマではありますが、人生をどう生きるかという悩みとして捉えればあらゆる人にとって自分ごとになり得る物語です。やりたいことをやるべきなのか、自分が得意で苦にならないことをすべきなのか。そもそも、自分は本当は何が好きで、何をやりたかったのか。 また、自分より面白くて絶対に売れるべきなのに売れてない人もいれば、堅実な道へと進んだ人もいる。自分はどの道を進むべきなのか、進めるのか。そこに本当に道はあるのか、道が無ければ切り拓けるのか。ともすれば見失いがちなことを、本作の主人公・千葉を通して考えさせられます。 舞台の上に立つときのえもいわれぬ緊張感にはゾクッとしますし、逆に何気ない日常シーンの掛け合いに笑い癒されもします。 特に好きなのは、終盤のとあるシーン。主人公が得る気付きは、私たちも同様に見落としていてもっと大事にすべきものかもしれません。 同じくコンビ芸人を描いた『相方が俺を好きすぎる』と同日発売するというシンクロニシティが起きており、そちらのクチコミも書いていますが、併せて読むと面白味が増します。
兎来栄寿
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