銀灰のスピードスター
車の輝きが見える人達
銀灰のスピードスター 楠みちはる
名無し
車とかメカニックなものには全く詳しくないし それほど興味があるわけでもない。 四輪車に熱を上げたり自らハンドルを握ってバトルを しようとかしたいとか思ったこともない。 それでもまあ「湾岸MIDNIGT」は面白いと感じて全巻読んだ。 自分とは縁のない、ハイレベルで車を楽しんでいる 人達の世界の漫画なんだな、と。 ただそこで満足してしまったというか、続編らしい 「C1ランナー」は、そのうち読もう、くらいに思っていて 手を出していない。 「湾岸~」で満足してしまったというか、 お腹一杯になってしまったというか。 そんな状態で、湾岸シリーズの3部作目というか最終章 という作品の「銀灰のスピードスター」という二巻物の 作品があると知って読んでみることにした。 「C1~」を全部読むほど集中力はないが ちょっと手ごろなところで楠先生の車漫画の世界を 久々に少し味わおうくらいに思って。 あいかわらずの楠漫画というかんじで面白かった。 メカニカルな話が多いわりにじつはそれ程絵にしていない。 車体や車内を描いていたりモノローグ的な説明シーンが多い。 エンジンルームとかわりと描かれていない。 個々のパーツとか取付工程の実際とか殆ど描いていない。 それでも登場してくる車が高性能らしいことや 高性能であると判り語り乗りこなすキャラたちを カッコイイと思ってしまう。 四輪やメカに詳しくない自分だからこそ 高評価しているだけかもしれないし、さらに言ってしまえば メカに詳しい人が見たらいくつもツッコミどころのある 内容かもしれないと思ったりもする。 でも面白くて、この漫画の世界に世界観に浸っていたくなる。 ハンドルを握りたくなるわけではないが、 ハンドルを握ることで判る世界があり、 その世界を味わっている人達をカッコイイと感じてしまう。 自分には縁遠い世界だと思うし、もしかしたら 単なる虚像かもしれないとも思いつつも。
あいつとララバイ
雰囲気がリアリティを追い抜くバイク漫画
あいつとララバイ 楠みちはる
名無し
昔に好きだったバイク漫画(の多い)先生がいました。 その先生があるインタビューで 「かつてバイク漫画を描いて漫画編集部に持ち込んでも  ああ雰囲気漫画ね、で終わらされてしまってばかりだった」 みたいなことを言っていました。 先生御自身では自分の漫画を雰囲気漫画とは 思っていなかったようでしたし、雰囲気漫画というものを あまり肯定しない考えのようでした。 雰囲気漫画とは何か、の定義も難しいのですが・・ ですが、私自身はその先生の作品を 雰囲気がいい漫画、と思って好んで読んでいたので、 その記事を読んで微妙な気分になったことを覚えています。 その先生は楠みちはる先生ではないのですが、 楠先生は良い雰囲気の漫画を描く先生であり、 「あいつとララバイ」はその典型であり、 後の「シャコタン★ブギ」「湾岸ミッドナイト」 に続く雰囲気漫画の先駆けではないかと思っています。 あいつとララバイは話の流れに色々なバイク関係の話が 絡んできますが、わりと細かい部分は雰囲気で作られています。 論理的だとかメカニックな根拠があると言い切れるほどの 話の展開は少なく、あえていうなら 「それでも面白い」「そのほうが楽しい」 と思わせる感じでストーリーが走っていきます。 研二君が超絶テクニックでパトカーを躱すシーンとか、 具体的な描写はありません。 けれど1コマづつやページ全体の流れとかを上手く描いて なんだかおもしろい流れを見せてくれて、読んでる側としては その流れに乗って楽しめて納得しちゃうんです。 まさにその漫画の雰囲気に乗ったモン勝ちの世界。 リアリティを超えてバイクに思い入れが深まってしまう。 良い意味の雰囲気漫画を読ませてくれました。 そしてララバイにしろシャコタンにしろミッドナイトにしろ、 そういう雰囲気に乗ったことを読者に後々までけして 後悔させないだけの面白さがあると思います。 今になって思えば、ララバイの時代ですらすでに 旧車になりつつあったZⅡが最新バイクよりも 速く走る姿を描きながら読者を納得させていました。 そう思わせる雰囲気がそこにありました。 その手法をそのまんま湾岸ミッドナイトでも踏襲し、 それでいて飽きさせぬ色畔ぬ漫画を描いているのですから 楠先生は凄いですね。
神様のジョーカー
期待していたのとは違う方向だった
神様のジョーカー 楠みちはる 佐原ミズ
吉川きっちょむ(芸人)
吉川きっちょむ(芸人)
何気なく手に取ってみたけど、いい設定だった。 ごく普通の男子大学生の主人公はある特殊な能力を持っていた。 それは、「願いを叶える力」。 ただし、代償は願いを叶えた人の身のまわりの大事なモノや人でバランスを取るかのような不幸が必ず起きるということ。 半信半疑だったその力に確信をもっていくような描写や、能力の分析・検証って面白いよねーといつも思う。 全3巻という短さの中で、その末路に至った人や、かつての関係者を描いていたのは良かったが、思っていたようなワクワクするような展開には転がっていかなかったので少し残念。 主人公にとってあまり大きい波風が立たずにある意味無事に終わってしまい、投げっぱなしのようなむず痒さが残る。 勝手な言い分だが、一度狂おしいほどの強烈な不幸を味わってほしかった。 この能力の肝は、死神?の意図かそうでないかに関わらず、能力を使わなきゃいけない状況・場面に追い込まれていったときに「願う」かどうか、願ってしまった上でどう対処するか、すべてを突き放し孤独に生きるのか、代償を支払わせるためだけの関係を割り切って作るのか、能力自体にどう抗い戦っていくのか、そのあたりをもう少し具体的に見たかった。 映画『ファイナルデスティネーション』的な方向でも面白そうだったけど、作者さんがやりたかった方向とは違うのかなー。 大事な人を守りたい、という部分が強かったから動かせなかったんだろうか。 大事な人を守りたいからこそ、願ってしまう姿を見たかった。 ハンターハンターのハンター試験でも出たドキドキ二択クイズのような、母を取るか、恋人を取るかのような命題がほしかったなー。 運命と諦めないで泥臭く抗うような、そんな漫画を読みたい。