1年以上前
「まほらば」の小島あきら先生が原作ということで、心温まるストーリーの中で重い設定もあっけらかんと軽く出してきたり、かわいい美少女もたくさん出るが、その割にお色気は絶無で、ゆるい雰囲気で心癒される、まさに小島あきら作品。 しかし小島あきら先生は基本的に線の細い男性キャラしか描かなかったので、作画の香澤陽平先生の描く主人公がちゃんと骨格も太い「男」キャラで、結構新鮮な部分もある。 主人公の零時はやれやれ系というか、人とそんなに関わることもなく日々を生きていたのだが、ある日謎の美少女を見かけたら、その美少女はずーっと誰にも認識されなかった幽霊のような存在で、なぜか零時の家族は自分を認識していたことから零時にたくさん子供を作ってもらおうと余計なお世話を焼いて、なんだかんだ面倒見のいい零時は何人もの美少女に好意を寄せられていく。 どのキャラも大変かわいいし、主人公は割と男らしく孤独な少女たちとの交流でお互いに好意を寄せあっていく風景も美しく、ラストのハーレム展開は思わず笑ってしまう程に明るく軽いノリが徹底されている…のだが… 何考えてこのセリフしゃべらせた!?副題は小島あきらの遺言!?という程に最後に衝撃を受けた。 ファンならご存じだと思うけど、小島あきら先生は「このままだとあと数年で死ぬよ」と医者に宣告されたのを、あっけらかんと漫画で報告なさっていた過去があり、まさにその数年が経過してからこの作品を連載なさったのだが… 最後の最後、還暦を迎えた主人公がレイに対して感謝を述べるシーンが、もはや小島あきらという漫画家の遺言に見えて仕方がなかった。 いや小島あきら先生は年齢自体は非公開なのだが、99年デビューからもう20年、流石にまだ還暦ではないかもしれないが、過去の経緯から余命を意識なされても不思議ではないので、最後の最後、ハーレム完成からの命の巡りを感じさせる展開と相まって、心温まるはずのハートフルストーリーがシリアスでヘヴィで凄みを感じる鬼気漂うストーリーに感じてしまった。 ただの邪推といえばそれまでなのだが…。 ハーレム漫画としてはお色気展開は全く無い、しかし美少女たちとの交流はそれだけで大変心地いいし、みんなを幸せにするハーレム展開も心を癒す。 主人公の零時も結構な好漢で良い意味で男らしく、お色気無しという点は逆に他人にお勧めしやすいともいえるので、タイトルで敬遠せず手に取って読んでほしい作品。 ただし原作者のファンなればこそ、最後の最後は心を癒すより胃が痛くなる可能性を否定できない、そういう意味ではむしろ余計な先入観を持たずに読んでほしい作品でもある。