名無し
1年以上前
ハートフルを超えて行け
同じビッグコミック系列で似たような作品を挙げるならば『夕焼けの詩 三丁目の夕日』だろう。 ノスタルジーの中にハートフルな物語を時にファンタジーも交えて届けてくれる。読む度に、心の体温計は少しだけ上がり、自然と優しい気持ちになる。 『利平さんとこのおばあちゃん』もノスタルジーである。しかし、そのバックグラウンドは異なる。 『三丁目の夕日』が高度成長期の街が舞台であるのに対し、こちらは地方の田舎である。しかも主人公は夫に先立たれた老婆。いわばその時代に削ぎ落とされたものたちの物語だ。 老婆に悲壮感はない。むしろ生き生きとしている。それがまた、このバックグラウンドとあいまって読む者に悲哀をもたらす。いかなストーリーを紡ごうとも、根底にある暗さは拭えないからである。 しかし、だからこそ、そのノスタルジーが響くのである。そのハートフルが胸を打つのである。 利平さんとこのおばあちゃんは人が人として生きるための基本的な感情を偽ることなく教えてくれる。 40年前の漫画だが、今の人々にこそ、その教えを伝えてほしい。
利平さんとこのおばあちゃん
法月理栄
7
わかる