黒賀村在住
1年以上前
今読んでほしいシルベストリ戦のこと #マンバ読書会
黒賀村編が尺延ばしだったとかテコ入れだったとか言われるたびに悲しくなってしまうのですが自分は大好きです。なぜならあるじゃないですか、シルベストリ戦が!! 修行中の勝の元に送り込まれたオートマータの刺客・シルベストリ。外見は老人そのもの、オートマータらしいギミックを持っているわけでもなく武装は腕の仕込み刀のみという渋い仕上がりの人形です。 にもかかわらず「最古の四人」アルレッキーノやパンタローネを瞬殺するほどの実力の持ち主で、純粋な剣の腕前のみを理由に味方からも一目置かれているという絶対に強いタイプの敵キャラです。(唯一人形っぽい特徴も体の中に沢山スペアの刀が入れられるだけという一点特化型なのがしびれる) シルベストリの任務は人の生活の中に溶け込み「笑い」を研究すること。 彼は勝に「人はどうして群れるのか」を問います。人同士の関わりを最小限にすれば争いも無くなるのになぜ愚かしくも仲間を作るのかという、人間との距離が近かった彼だからこそ生まれるような、ある種の本質をついた問いです。昨今の世相にも突き刺さるような重みが生まれている…と感じずにはいられません。 それに対して勝は「誰かが隣にいることで変わっていけるから」と答えます。それこそが人間の進化であり、何も変わることのない人形との違いであると。 冷静なシルベストリが唯一激昂したのが孤独なオートマータに進化なんて出来るものかと看破されたこの瞬間でした。 勝がシルベストリに言い放った「人間は負け続けるようには出来ていない」という言葉は『からくりサーカス』のなかでも特に大好きなメッセージで、こんな時期だからということもあってか、久しぶりに読み返してゾクゾクしてしまいました。勇気をもらえた気がします。 常に単独で行動して、真の意味で誰とも交わることのなかったシルベストリは最後に「人の輪の中に入りたかった」ことに気付くのですが、ここが本当に切ない…。人形であっても本当は変わることが出来るという優しさのようなものが感じられるのです。 作中屈指の強キャラとの戦闘の緊張感もさることながら、本編を通してのテーマがドッシリと横たわっている読み応えのあるシリーズです。
からくりサーカス
藤田和日郎
12
わかる