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高野文子さん 新潟の少女が漫画家になるまで日本経済新聞たかの・ふみこ 1957年新潟県生まれ。作品集に「絶対安全剃刀(かみそり)」「るきさん」「黄色い本」など。2022年のテレビアニメ「平家物語」ではキャラクター原案を手掛け、共著に「わたしたちが描いたアニメーション『平家物語』」。橋本治「桃尻娘」のイラスト原画橋本治さんの小説「桃尻娘」シリーズの文庫版イラストを依頼されたのは、1981年のことだった。79年に短編漫画「絶対安全剃刀」で商業誌デビューしたばかりで、まだ単行本も出していなかった頃だ。文庫の編集者の人が「ポルノ映画にもなったんですよ」と言うので、恐る恐るページをめくると、主人公は当時のわたしと同年代の等身大の女の子だった。初めて橋本さんに会ったのは、たしか79年のこと。後に夫となる秋山協一郎が主宰する文芸同人誌「綺譚(きたん)」で、わたしは挿絵を、橋本さんは詩を寄せていたのが縁になった。「綺譚」のメンバーはそのまま、編集プロダクション「綺譚社」を立ち上げる。角川映画の宣伝雑誌「バラエティ」なんかの編集をしていた。わたしも事務職として雇ってもらい、東京・飯田橋の事務所で電話番をしたり小さな挿絵を引き受けたりしながら、マージャン台の上で自分の漫画を描いていた。編集部の企画会議や作家との締め切り交渉を横で聞いているのはなんとなく面白かったし、文学賞のパーティーにくっついていくなど、ずいぶんいろんな人に会った。「桃尻娘」は小説の内容以上に、「こんにちは~」と打ち合わせにやってきた、橋本さん本人の印象がくっきり残っている。ヒョロッと背が高くて、右に左にゆらゆらと体を揺らしながら、ニコニコ顔で話すのだ。ピンク色のジャケットがよく似合っていた。早口で時々何を言ってるのか聞き取れないこともあったけれど、怖い印象はなく、好き勝手に絵を描くことができた。イラストレーターの経験もある橋本さんは、少女漫画をドッサリ読んでいた。今で言うライトノベルのように主人公のイラストを描くって、それまであんまりなかったような気がする。小説と漫画界が近づいていく時代を先取りしていたのかもしれない。どんなイラストにするか、不思議と迷った記憶はない。まだ駆け出しの頃で技術の100%をぶつけるしかなかったというのもあるけれど、一人称の「桃尻語」でベラベラしゃべる文体は小説というよりも漫画のセリフみたいで、キャラクターの姿は自然とわいてきた。カラートーンの使い方、下手だなあ。でも、結構がんばっているんじゃない?
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