マッドジャーマンズ  ドイツ移民物語
移民、青春、そして故郷
マッドジャーマンズ ドイツ移民物語 ビルギット・ヴァイエ 山口侑紀
たか
たか
1年以上前
1980年代、内戦の続くモザンビークから東ドイツへ渡った3人の若者たちが主人公。 東ドイツで青春時代を過ごした経験がそれぞれの「故郷」との関係を変えることになる。 党に理想を抱く真面目なジョゼ 未来がないことを理解し遊びを大切にするバジリオ 残された家族のために働くアナベラ 本文によると、この3人は作者がインタビューを行った実在のドイツ移民たちを「結晶」したものなのだそう。 彼らの東ドイツ生活は、先進社会主義国の雰囲気・先のない単純労働・移民差別で窮屈なんだけれど、決してそれだけではなかったというのがとても印象的だった。 女の子と遊んだり、恋人に出会ったり、勉強を頑張ったり、映画・小説・ファッションを楽しんだりしっかり青春もしていた。 (東ドイツで出会った絵本や映画、アイスクリームのラベルなどが、フォトコラージュのように描かれるページがとても素敵) 鬱屈した遠い異国の地で、彼らなりに日々に楽しみを見出し生きている姿は読んでいてとても眩しい。 だからこそ、移民であるために訪れた残酷な青春の終わりには強い喪失感を覚えた。 それぞれが迎えたその後の人生は、日本でずっと暮らしている自分の想像も及ばない深い怒りと悲しみに満ちていて、彼らの感じた激しい想いが、ページにぶつけられたインクの色と形とリンクして訴えかけてくるのが壮絶。 故郷を離れたことがある人も、ない人も。 この本は故郷とは何かを見つめ直すきっかけになる本だと思います。
旦那が突然死にました。
終始つらい。
旦那が突然死にました。 せせらぎ
ポコニャン
ポコニャン
6ヶ月前
冒頭すぐに旦那さんが亡くなり、そこからふたりの子供をかかえてシンママとしてどう生きていったかが描かれています(シンママって死別の場合は言わないんですかね?)。 正直、とてもじゃないけど同じ体験をした人はつらすぎて読めないんじゃないですかね…わかりませんけど。亡くなったときが気持ちのドン底だとすると、漫画を読みすすめるうちに上向きになってくのかなと思ったんですけど、全然そんなことなくて、ものすごい激しく上がったり下がったりを繰り返します。それこそ子どもを連れて死んだほうがいいと考えるときも。それが現実なんでしょうね。そしてこの漫画が出版された今も、いつ下がるかわからないとのことです。 どういう状況でなぜ亡くなったかによって残された家族が受ける心の傷って違うと思いますが、この作者さんの場合は、普段はとても仲良し夫婦なのに、たまの喧嘩をしたときに作者と子供が実家に帰って、旦那さんは家でひとりだったらしいです。旦那さんの会社の同僚から会社に来ていないと連絡が入り、すでに部屋の中で亡くなっていたことを電話で伝えられました。つらすぎる。想像しただけでつらい。 この漫画はどういう人が読んで、どういう受け取り方をするかが全く違うと思うので、なんとも言えないのが正直なところですが、自分の大事な身内とこんなふうに永遠の別れをしてしまうと考えると、絶対に嫌だなの一言です。 漫画としては、絵はふんわりしてて読みやすいですが、たまに長文テキストのみのページがあったり字が小さかったりと電子で読むのにちょっと難があるつくりでした。あと、最後の写真はいらなかったかな……漫画のイメージだけで完結させてほしかった。
幻想世界英雄烈伝 忍ザード
神より強い魔法使い!!(忍者志望)
幻想世界英雄烈伝 忍ザード 岡田芽武 てんま乱丸
サミアド
サミアド
11ヶ月前
SF&ファンタジーコミック誌『コミックガンマ』で連載していた漫画です。途中で雑誌が消滅!未完!原作者の漫画『影技 SHADOW SKILL』は移籍完結したのに… 影技など他作品の用語が出てきます。連載が続けばもっとクロスオーバーしたかも。単行本に未収録の話もあるので完全版で復刊希望です。 漫画家になる気が無かった作画担当てんま乱丸先生を原作の岡田芽武先生が2年間(!)説得して実現した乱丸先生のデビュー作。プロローグは絵以外全て岡田先生ですが以降は乱丸先生も一緒に話を考えてコマ割りも自分でなさっているそうです。 神より強い魔法使い(ウィザード)・月影が忍者に憧れて異世界転移。服部半蔵と友達になって風魔や陰陽師軍団と戦います。 忍者としてはダメダメですが魔法は最強。『努力しすぎた世界最強の武闘家は、魔法世界を余裕で生き抜く。』系統の無双ぶり。 しかし敵もついに強力な"神"を召喚して…という所で未完。なんてこった。続き読みたかった… 1995年の漫画としては設定などが新鮮でした。 パートナーが四字熟語変身して戦うスタイルは次回作『幻想世界魔法烈伝 WIZバスター』に受け継がれています。
人間不信の冒険者たちが世界を救うようです
正直ラノベ版の方が好きだが
人間不信の冒険者たちが世界を救うようです 川上真樹 富士伸太 黒井ススム
ピサ朗
ピサ朗
1年以上前
美麗な絵が付くとやはり読みやすいし、短くされているとはいえ冒険者たちのダメダメな表情が実に愛おしい。 ストーリーを言うと中堅どころの冒険者PTに所属していたニックだが、細々とした裏方仕事をウザがられて追放されて…といういわゆるなろうの「追放物」のテンプレっぽく、実際なろう版も存在するのだが この作品の実に面白い所は、そうして身を堕としたダメ人間描写が一々説得力と生命力にあふれまくっている所。 メンバーが落ち込んだ時に出会ってしまった趣味がアイドルオタク、キャバクラ好き、賭博好き、食い歩きなのだが、小説版ではここがまあ実に生き生きとしたダメな趣味に出会ったダメ人間を軽妙な筆致で描いていて、感心した物。 漫画版ではこの部分が、主人公ニックのアイドルオタクになる部分しか描かれていないが、実に残念。 とはいえ人間不信なりに仲間との絆を作っていく姿、その為のルール作りなどは所謂ぼっちの人には中々共感できそうな部分も有り、何だかんだ仕事と生活が充実して、現実から逃げるようにハマったダメな趣味が、健やかに自分の生きがいとなる健全な趣味になっていく様なども中々読ませてくれる。 戦闘部分は小説版ではそれ程しっかり読んでいなかったのだが、作画担当の絵が上手いのでここも楽しめる物になっていて、コレは漫画版ならではの利点と言える。 タイトルからするとこの後は大きなヤマにぶち当たるのだろうが、なろう版を読んでも世界を救うのはだいぶ先になりそうである。
吹部やめたい萩野さん【電子単行本】
ゆるく明るく楽しい吹奏楽部コメディ #1巻応援
吹部やめたい萩野さん【電子単行本】 桃原
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兎来栄寿
兎来栄寿
4ヶ月前
読切掲載時に人気を博し、連載化された期待作の単行本1巻が満を持して発売されました。 中学時代から吹奏楽部の経験者で、地味で根暗な眼鏡っ子のおはぎこと萩野(チューバ)。 高校から吹奏楽を始めて吹くどころか腹式呼吸もろくにできないものの、顔はかわいい桐谷(バスクラリネット)。 そのふたりが中心となって、高校の吹奏楽部を舞台に繰り広げられるコメディです。作者本人が公言している通り阿部共実さんのフォロワーであることがよく伝わるアニメ塗り調のパキッとしていてかわいい画風に、独特のギャグがミックスされた心地よい世界が展開されています。 特に、各所でのセリフのセンスがとても光っています。たとえば1,2話から引用すると 「猟奇的な偏見!」 「何そのモールス信号みたいな呼び方」 「先輩は私の毒牙に侵された生ける屍」 「人生は! かさぶただらけが丁度いい! この屈辱は私の命を彩り焦がす青春の研鑽だ!」 といった具合で、ボケもツッコミも普通には思いつかなさそうな言葉の並びが出てきます。かわいい絵柄ながら、パワーを感じる表情や勢いとワードセンスのマリアージュが絶妙です。 話が進むにつれて魅力的なキャラが増えていきますが、個人的には芒乃さんや藤村さんが好きです。2年のトランペットの鶴巻先輩を巡るラブがコメるようなコメらないようなところも楽しいです。 阿部共実さんのダークな部分やブラックな部分を取り除いて、残った光の部分に独自のスパイスをかけたような作品となっているので、気軽に何かを読みたい方や笑いたい方にお薦めします。 どうでも良いのですが、「バァァスゥゥクゥゥラァァア!?」は某看護師ドラマの「あ〜さ〜く〜ら〜〜〜!?」を意識しているのかがほんの少しだけ気になります。
純(ジューン)ブライド
愛するという一つの例として
純(ジューン)ブライド 𠮷田聡
ナベテツ
ナベテツ
1年以上前
まだ少年と呼ばれる頃に、何も知らずにこの作品を買って読みました。マセガギと言われても仕方ないし、母親にこっぴどく叱られたこともあります(それでも捨てられたりはしなかったんで良い親だと思います) 恋愛が甘い物である、ということは流石に否定出来ません。ただ、二人が一つ屋根に暮らすということは、終わらない「日常」に暮らすということでもあります。そこは決して天国ではないし、息が詰まるようなこともある。 それが「愛」という感情によって始まることだと、この作品はかつての少年に見せてくれました。恋人は決して美しいだけの存在ではない。自分と同じように肉体を持った存在であり、そのことで苦しめられることもあるんだと、異性のことを何も知らなかった頃に学んだものでした。 バブルの頃、恐らくこの作品のような生き方は現実感を失っていたのではないかと思います。今の時代にはどうでしょう。若者が貧しくなっている現実もありますが、こんな関係からは恐らく逃避するんじゃないかとも思います。ただ、作中に登場する人達は、自分自身を取り巻く日常に対して必死で生きています。誰に笑われても構わない。唯一人のために生きているという現実は、自分のためだけに生きている人間には、まっすぐで美しいものに映ります。 この時期スローニンやDADAを描いていた吉田聡先生にとって、明らかに異なる作品であり、ある年代にとっては忘れられない作品だと思っています。
映写室のわかばさん
技術の進歩で風化される専門技術を思う
映写室のわかばさん 青山克己 神田川あゆ
六文銭
六文銭
1年以上前
時代の流れとともに、昔は人の手でやっていたことがボタン一つで片付いてしまう。 そんなところに、なんとなく哀愁を感じるんですよね。 電気をつけるのも昔は木から火を起こしていたわけです。 それがランプになって、今はスイッチひとつですよ。 手作りだった下駄も、今は工場であらかたつくってしまうわけです。 映画の世界も、時代はデジタル再生です。 なんなら人もいないかもしれない。 映写機を使ってフィルムでみれる映画館もどんどん減ってます。 本作はそんな希少職業の一つ「映写技師」のお話。 スクリーンに写す映像を、フィルムで順次流し込む仕事です。 映画1本で、巻き尺みたいに巻かれたフィルムの束を何本も使うこともしばしばで、そのつなぎこみをうまくやる熟練のテクニック。 1分1秒を見逃さず、観客にむけて映像を絶え間なくきちんと流す。 純粋にすごいのですが、機械に取って代わられてしまった技術なんです。 それでも人の手でやることに、私は味があると思うんですよね。 面倒だからという理由で、簡素に効率化して失われてしまったものたち。 そこに、本質があるんじゃないかと思ってしまうわけです。 本作の主人公も、そんなレトロな技術に没頭します。 これから先、使い物になるかどうかわからない技術なのに、 打算もなく、純粋にただ好きで楽しむ姿はすごく良いです。 あぁ、まだこんな世界があるんだなと痛感させられる作品でした。 やっぱり人が関わっている、人がつくっているっていいもんです。
あしたのジョー
今更ながら読みました!
あしたのジョー ちばてつや 高森朝雄
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酒チャビン
酒チャビン
1年以上前
まず、ジョーのキャラが思ってたのと全然違ってびっくりしました! もっと寡黙で、周りがぎゃあぎゃあ言っているところを「黙って見てろ」みたいな渋めのキャラだと思っていたのですが、どちらかというと自分がぎゃあぎゃあ一番騒いで、周りに制される感じの跳ねっ返りキャラだったのですね。 後半、前記のような渋めの部分が出てくるので、そこが世間でクローズアップされているため、そのような印象を持っていたのかもしれません。 そんな跳ねっ返りキャラを中心とした前半は、読んでてイマイチジョーが魅力的に感じられませんでした。メンドーサ選手にも絡み、「礼儀知ラズノ黄色イ獣ニハサワルノモゴメンダ」と言われて激昂するのですが、わたしもどちらかというとメンドーサ選手の意見には頷け、ジョーには同じ日本人で尚且つ主人公とはいえどもちょっと庇いきれない蛮行が多く。。。 「当時の読者はこういうキャラが好きな人が多かったのかな?当時の時代ってのもあったのかな?」とか「自分も歳をとって、やんちゃくれやはみ出し者を良しとしないフニャ○ンになってしまったのかな」など感じていましたが、どうなのでしょうか? ただ、物語は前半からかなり面白く、後半に進むに従ってジョーにもだんだんと魅力を感じはじめ、ハリマオ戦後からラストまでの展開は、さすが語り継がれる名作!と、わたしも相当シビレました!!!最後の最後の葉子さんとの心の邂逅には、わたしもむせび泣かずを得ませんでした。金竜飛戦も好きです!!
馬なり1ハロン劇場
日本競馬漫画界のこち亀
馬なり1ハロン劇場 よしだみほ
ピサ朗
ピサ朗
1年以上前
もはやそう言っても差し支えない長期連載ギャグ漫画。 基本は擬人化された競走馬たちやホースマンをネタにしてレースやドラマをギャグ仕立てで描いていくショートギャグなのだが、連載年数が30年以上という長さ、そしてネタにするのが競馬だけあってその当時の血統地図、観客目線で感じられたドラマ、万馬券、馬に対する印象などなど、非常に広範囲。 基本はギャグ漫画とはいえ馬やホースマンを題材にするだけあり、茶化してはいけない話題には手を出さないようにしているが、牧場見学のマナーや当時の問題点(ストライキ、税制)なども触れており、コレを読むだけで浅いながらもかなりの広範囲、それこそこち亀で現代日本の通俗史を学ぶ程度には競馬史を学べる。 連載開始がオグリキャップブームを追い風にしてのことなので、必然的にそれ以降の年代が主要なネタ元になっているのだが、天の采配か、オグリキャップの引退=サンデーサイレンスの導入という日本競馬史の一大転機が重なっている事も有り、連載年数の長さも手伝い当時から現代に繋がる競馬事情を少なからず感じられるだろう。 ギャグ漫画としてはやはり競馬ネタがある程度分かった方が更に楽しめるが、クスリと笑わせてくるネタが多く爆笑と言った風情では無い。 ただし競馬知識不要なネタも多く、擬人化された動物漫画でもある事、ライトな話題が殆どなだけに競馬を知ったばかりの方、知らない方でも全く問題なく読める。
ブルーブルーそしてブルース
26歳と66歳のクロスロードブルース #1巻応援
ブルーブルーそしてブルース 榎屋克優
兎来栄寿
兎来栄寿
6ヶ月前
『日々ロック』の榎屋克優さんが、ブルースを描く。それだけで事件ですし、熱いものがこみ上げてきます。 忌野清志郎と甲本ヒロトを愛していて「ブルースはどちらかというと古臭い」「ビートルズやストーンズの方がかっこいい」と思っていたという榎屋さん。ですが、この作品を描くにあたってブルースを聴いてみたらどハマりしてしまったそう。 そもそも、作中でも語られる通りロックのルーツもブルースですからね。必然的な帰着なのかもしれません。私自身も元々はロックが大好きでしたが、ジャズやブルースをこよなく愛する親族の影響で有名どころは聴いてきています。ブルースにはブルースの、また違った良さがありますよね。 本作では第1話「Change My Way」からサブタイトルがブルースの有名楽曲名となっています。ブルースに馴染みのない方も、まずはこのサブタイトルになっている曲辺りから聴いてみると良いのではないでしょうか(第2話の「Everything's Gonna Be Alright」は検索するとSweetboxの方が先に出ると思いますが、Muddy Watersの方でしょう)。 本題の作品内容は、26歳の健康食品会社の営業である田中が十字路で悪魔に40年の寿命と引き換えに「ブルースマンになりたい」という願いを叶えてもらう契約することで、憧れの66歳のブルース奏者である仲村弦と入れ替わってしまうというものです。27歳で逝去した伝説のブルース歌手ロバート・ジョンソンのクロスロード伝説に擬えているのは言うまでもないですね。 ただ、ロバート・ジョンソンは恐るべきギターの腕前を手に入れましたが、田中はさしてギターも上手くないまま弦と入れ替わってしまったことで、むしろ苦労します。 通常、転生モノや入れ替わりモノだと、元の体での経験や知識を活かして無双したり、あるいは替わった先の体の超絶技能を駆使する展開だったりが多いですが、田中はその逆を行っているのが面白いところです。もし自分が推しに転生したらと想像すると、恐れ多すぎて慄きまともに動けないことでしょう。田中の苦労は察するに余りあります。 一方、元の田中の体には弦が入り、ミュージシャンとして自由を謳歌してきた人生から一転して毎日満員電車に乗って出勤するサラリーマンとしての生活をスタートします。弦が未経験ながら持ち前のコミュニケーション能力で見事に営業の仕事を行うシーンでは、アンドリュー・カーネギーを思い出しました。このふたりの入れ替わり生活の対照的な様、それでも根底にある音楽の楽しさや素晴らしさが読んでいて心に響きます。 3月に発売した『メゾン・ド・レインボー』などでも顕著でしたが、榎屋さんの描くキャラクターたちの何とも言えない人間臭さや温かみが心地良く、随所で利いています。人生のどこかで交差したことがあるようにも感じられるサブキャラクターたちもとても魅力的で、ふたりと彼らの関係性も見どころのひとつとなっています。会社のメンバーとのカラオケのシーンや、ボトルネック奏法のシーン、京都の一幕など好きな良いシーンがたくさんあります。音楽が絡むシーンの熱量は流石です。 物語の行く末は開幕1ページ目で暗示されており、まさに憂歌の様相を感じさせていますが、40年の寿命を捧げた田中と40歳差の弦は果たしてこれからどうなっていくのか。 ウイスキーと音楽と一緒に嗜めば、良い夜になること請け合いの作品です。
実際にあった怖い話
「ほん怖」と「実怖」
実際にあった怖い話 実際にあった怖い話
star
star
star
star
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ひさぴよ
ひさぴよ
10ヶ月前
ホラー雑誌「実際にあった怖い話」は、タイトルこそ「ほんとにあった怖い話」とよく似ていて見分けがついてなかったが、実は別々の出版社から発行されていている別雑誌だと最近知った。 元祖は「ほんとにあった怖い話」(朝日新聞社)で、「実際にあった怖い話」(大都社/少年画報社)の創刊は2007年。明らかにを狙った誌名だと思うが、元祖「ほんとにあった怖い話」は2010年に休刊してしまう。 その後まもなく、2011年に「HONKOWA(ホンコワ)」と名を変えて新創刊されることになるも、依然として名前が似ており、ごっちゃになって間違えやすい。加えて、「あな怖」(あなたが体験した怖い話/ぶんか社)などの亜種もある。また、「フォロワーさんの本当にあった怖い話」というマンガが話題になっていたが、こちらも他の出版社の作品。ちゃおホラーにも「本当にあった怖い話」というこれまた紛らわしい別冊雑誌があったが「ほん怖」シリーズとは別物である。これらの版元の違いだけでも知っておくと見分けやすいかもしれない。 前置きが長くなったが、「HONKOWA」や「実際にあった怖い話」といった雑誌は、今や電子書籍で読める時代になっており、手に取りやすくなっている。 最新号「2021年11月号」を初めて買って読んでみた感想としては、オカルト・ホラー・スピリチュアル要素がバランス良く揃った雑誌という感じ。 連載作は14本前後と、HONKOWAよりも多く、値段もコンビニコミック価格なのでお得感がある。 マンガファン的には、連載陣の中に、かつてIKKIで活躍していた漫画家・三友恒平先生を見つけられたのが嬉しかった。 他にも、つるんづマリー先生、柏屋コッコ先生など他のコンビニ系雑誌で見かける作家さんが揃ってる。作品だと「或る霊能者の奇妙な日常 余命宣告からの生還」は特に良かった。 しばらく定期購読してみてもいいかも。 以下連載作品リスト(2021/11) 【或る霊能者の奇妙な日常/原作 井口清満 漫画 万馬夕子】 【どすこいスピリチュアル/漫画・小林薫 原案・TANAKA】 【心霊浄化師 神楽京/原作・井口清満 漫画・水月まな】 【山口敏太郎の日本怪忌行/漫画・未浩 原作・山口敏太郎】 【立原美幸の心霊エッセイ/金子裕】 【SNS-生霊-/漫画・空路 原作・橘 明来】 【つるんづ怪談/つるんづマリー】 【珠洲岬でアップデートしてみた/伊藤ロイ】 【稲川怪談/藤咲もえ】 【ちょっぴリチュアルDAYS/若尾はるか】 【鳩屋ポッポのホラーな日常/柏屋コッコ】 【コミック版 怪談王 第2回「お遍路さんが泊まらないホテル」/漫画・三友恒平 原作・小笠原まさや】 【銀座スナックでの出来事/小立野みかん 原作・島村洋子】 【前世療法の現場で見る怖い話 血椿の痣/漫画・油豆 証言者・桜ゆう】
ブルースカイコンプレックス
元親と夏生の高校時代から大学生生活の日常(ちょいスパイスあり
ブルースカイコンプレックス 市川けい
star
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るる
るる
5ヶ月前
高評価なの納得。最高。 最初は夏生から元親への気持ちだったけど、いつのまにか夏生に関しては(市川先生曰く)元親が強火に反応するような展開になってる😂 夏生はヤンチャではあるけど実は優しくて可愛い。 JKの件で思ったのは、絶対傷ついたけど謝罪受け入れてぶっちゃけられる優しさと強さがある。 (元親兄との時もそうだったな) 何かに強く興味を持つような心の機微に疎かった元親は夏生と出会って生活に色がついたように思えた。 上手く言えないけど「生きてる」って感じ。 範康は過去に傷ついた経験から自分の性癖は隠す以外に選択肢がなかった。 大学でもひたすら隠していた事は他の人にとって「何でもない事」「普通のこと」だということが受け入れられない葛藤には貰い泣きしてしまった。 幸せになってくれ(涙)。 夏生母は大らかで好きだな。 好きに生きればいい、でも帰る場所はあるよ、的な愛を感じる。 元親兄の反応はとてもリアルだったな。偏見はないのに家族だった場合は瞬間思いがけず想定外の反応をしてしまう。 2人一緒に帰省するエピソードが早く見たい。 ここ乗り越えたからきっと上手くいくと思う。 待ってた8巻は読みたかった展開ではなかった。 サッサとこのモヤモヤ終わらせて欲しい。 楢寺の周りのアレコレなら良いけど、2人の間には波風要らないなー。 9巻やっと読んだ。スッキリしたーーー! 元カノは違ったけどDKは予想通りだった。 栗栖ナイスアシスト! 確かに性別が違うだけで無防備対応してたのは元親の時と同じだわ。 当事者だと他人から指摘されないと気づかないとか。 (それでも元カノのネッチリした感じ嫌いだわー) 2人ともお互い家族ぐるみのお付き合いなの最高。 今後は友達も良いけど家族の登場も歓迎!双子LOVE❤️
かんかん橋をわたって
嫁姑漫画を少年漫画の文法で描く!
かんかん橋をわたって 草野誼
toyoneko
toyoneko
1年以上前
「嫁姑漫画」なるジャンルがあります。嫁と姑の確執は永遠のテーマですからですね。コンビニなどでよく見かけます。 そして本作「かんかん橋をわたって」は、嫁姑漫画の極北に位置する漫画です。 初期は、まぁ、わりと普通の(?)嫁姑漫画です。嫁ぎ先の姑がイジワルで、いろいろな嫌がらせをしてきます。 主人公の嫁ぎ先である「川東」(かわっと)では、イジワルのことを「おこんじょう」と呼ぶのですが、主人公の姑はなんと「川東(かわっと)一のおこんじょう」と呼ばれている凄い姑! 主人公は、そんなおこんじょうに耐えて一生懸命頑張る!というお話でした。 まぁ3話で「嫁姑番付」という「嫁いびり番付」の話が出てきたりとか(主人公は4位)、やや特殊な設定が見え隠れしますが、このへんはまだ普通でした。 ところが4巻くらいからだんだん風向きが変わります。 主人公の姑は、ただの「おこんじょう」ではなく、恐るべき策士であることが明らかになっていきます。 主人公は、その様子を見て、「お義母さんにはすべて見えているんだわ」「なんて…なんてすごい人なんだろう!」とか言い出します。 そして、憧れの姑に負けないように、自らも恐るべき「おこんじょう」を発揮するようになっていきます。 具体的には、姑の着物ダンスから防虫剤を全部抜き取って着物を虫食いだらけにしたりするんですが…(なお、姑はそれを見て大変喜び、とびきりの笑顔で虫食いだらけの着物をきて歩き回ります。)。 さらに、主人公は、その他の嫁姑番付ランカーにも働きかけ、嫁姑の仲違いを解消したり、問題を解決するなどして、どんどん力をつけていきます。 それを見た姑が「なんて上手なおこんじょう」と評すシーンなどは、作中屈指の名シーンですね!(添付)。 そして物語はクライマックスに向けて動き出します。 地域支配者たる「ご新造さま」があらわれ、嫁姑番付ランカーが次々と登場します。 恐るべき「ご新造さま」に対し、主人公と姑は共闘し、最終決戦に挑むことになります。 もう何のこっちゃか全然わからないかもしれませんが、とにかく最終的にはそういうお話です。 このように、本来は、嫁姑漫画のはずなのですが、「嫁姑ランキング」とか「成長する主人公」とか「力を合わせての最終決戦」とか「ラスボス」とかの少年漫画的要素を盛り込みまくって完成されたのが本作です。 「嫁姑漫画を少年漫画の文法で描いた」ともいえます。 怪作ですが、個人的には大好きです! なおコミックは全10巻(ただし電子版のみ)。現在は全巻アンリミで読めます!
性別「モナリザ」の君へ。
男性・女性・無性別、それぞれの目線で恋愛感情を因数分解していく作品
性別「モナリザ」の君へ。 吉村旋
sogor25
sogor25
12ヶ月前
1巻で物語の設定と主要キャラ3人の関係性について描き、2巻では3人のキャラクターの感情の表現を深めていく。しおりとりつは男性・女性の目線で好きの感情を、ひなせはそのどちらでもない位置からの2人への感情を因数分解していく。その感情の掘り下げ方が凄く丁寧。 しおりとりつの2人は「ひなせの性別を決めさせる」という大きな目的がある分、より性差を強調した感情の表現を見せる。一方のひなせは、無性別という立ち位置ながら、中庸ではなく両性を持ち合わせたような感情を見せる。本人たちにそこまでの自覚がなくて戸惑いを見せる所も含めて実に面白い。 後天的に性別を選択できる世界を扱った作品としては最近では「境界のないセカイ」「選択のトキ」などもあったけど、今作は性選択≒恋愛対象の選択という意味合いが強くて、性別と恋愛感情というところに強くフォーカスしている印象がある。その上で、(ゼロではないけれども)安易に性愛の話に持っていかずに、性別と感情の結びつきに重点を置いてモノローグが展開している。その辺りが革新的でもあり、自身の感情を重ね合わせての考察が捗る。 ミクロでこの作品を見ていくとこういう感じなんだけど、物語をマクロで見ていくと突然「無性別のまま20歳を迎えた人間は存在しない」という新たなテーマが出現する。2巻の展開で、実はPSYCHO-PASS的なディストピアっぽい裏設定が隠れているのかもしれないと想起もさせる。3人の関係性も含めてまだまだ作品の底は見えない。 2巻まで読了。

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