ありす、宇宙までも

一人の少女が宇宙飛行士になるまで

ありす、宇宙までも 売野機子
吉川きっちょむ(芸人)
吉川きっちょむ(芸人)

一人の女性が、日本人女性初の宇宙飛行士の船長を任されるという快挙を成し遂げるまでを描く物語。 https://bigcomics.jp/episodes/d6a70645fb08e/ 彼女が小学校の頃に話は遡る。 みんなから人気の小学6年生、朝日田ありす。小6の終わりに転校してきて、運動神経抜群の謎の美少女転校生として周囲からはいつも噂される存在だった。 「両親を亡くしている」「帰国子女だからカタコト」「天然キャラ」「ありすはウチらの赤ちゃんなんだから」と好き放題言われていた。 そんな彼女にはある悩みがあった。それは言葉が分からないこと。 親の教育で、海外に行きバイリンガル教育を受けていたが、英語と日本語どちらの言語も中途半端になってしまった「セミリンガル」というもの。両親はそれに気づく前に亡くなってしまった。その状態で、彼女はどこに行っても目の前の話についていけないまま12年間過ごしてきたのだ。 それに気づかせてくれたのは勉強ばかりしている神童と名高い犬星くんだった。彼女が天然ではなく、そもそも言葉を分かっていないことを見抜き「おれが君を賢くする。」 と宣言し、二人で奮闘していくことになった。 これは素晴らしい…。 読んだとき、これは自分の話か?と思ったほど。 「セミリンガル」としての状態はおそらくありすほどではなかったと思うが、自分も親の仕事の都合で5歳頃までアメリカにいて、帰国後また小6~中3でベルギーに渡った。 日本にいた5歳~小6のとき、親が相当な教育ママだったせいで運がよかったのかしっかり勉強をさせられていた。いま思い出すと当時いろいろ曖昧なまま過ごしていた部分がかなりあった。それは長いこと続いたし、4つ上にいる兄は話し言葉は大丈夫だったが書く日本語は壊滅的だった。 もし、よく分かっていないまま放置されていたら…と考えると恐ろしいし、自分には親がいたようにありすが犬星に出会えたことが本当に良かったと思う。 中学に上がり、毎日放課後にありすが犬星と学んでいくことで一つ一つ言葉を獲得し、世界の解像度が明確に上がっていく過程が面白い。 彼女から見える景色がめくるめく変わっていく。 知らない事が恥ずかしくない状態になる。それがとても重要だ。 胸を張って生きていける。 売野機子先生、ありがとうございます。 これからどうなってありすが宇宙飛行士の船長にまでなっていくのか、とても楽しみです。

ようこそ!FACT(東京S区第二支部)へ

嘘か真実か陰謀論

ようこそ!FACT(東京S区第二支部)へ 魚豊
六文銭
六文銭

自分が何かと恵まれていないのは、何か大きな陰謀によるものではないか?という、ネットではびこる「陰謀論」がテーマの本作。 主人公は、いわゆる社会的に弱者の部類で、それでも自分にも特別な何か(人生大逆転できるようなものが)あるんじゃないかと日夜怪しいセミナーに通いながら過ごす。 そんな中、偶然出会った大学生の女性に恋してしまう。 関係を深めていくなかで、彼女につきまとうFACTという謎の組織の存在を知り、彼女を守るために接触。 そこは、陰謀論に染まった集団で、自分の境遇の悪さも、彼女と出会ったのも全てが大きな陰謀だったと諭され、気づくと彼もまたその思想に染まりはじめてしまう・・。という展開。 社会的な問題を扱う重そうな感じもあれば、コミカルなヌケ感もある。 現実を描いた漫画だから明らかに嘘っぽくも感じつつも、これ実はファンタジー漫画なのでは?と思うと真実のように感じてしまう。 ついつい、陰謀も本当のように感じてしまう。(ちょっと調べればわかるんですけどね) そんな感じで嘘か真実かわからないながら、自分なんかは読んでいたのでめちゃくちゃ楽しめた。 特に2巻。 主人公が上述した恋心を抱いている女性に、付け焼き刃的な稚拙な持論を展開し、一瞬で論破される様は読んでいてホント痛々しく、ゾクゾクした。 共感性羞恥をこれほど感じたシーンはないと思う。 4巻で最終巻らしいけど、どうオチをつけるか気になる。