魔太郎がくる!!

藤子・不二雄Aが少年誌で暴れた怪作

魔太郎がくる!! 藤子不二雄(A)
兎来栄寿
兎来栄寿

『忍者ハットリくん』、『怪物くん』、『オバケのQ太郎』といったビッグタイトルを藤子不二雄Aさんが生み出した1960年代。 藤子・F・不二雄さんは『パーマン』や『21エモン』などを描いていた時期であり、二人共「児童向け作家」というイメージが定着していました。今でも、『ドラえもん』でしか藤子不二雄の名前を知らない人はそのイメージが強いかもしれません。 しかし、1960年代の終わり頃から二人は大人向け・ブラックな題材の作品も数多く発表するようになります。 Aさんの代表作である、『笑ゥせぇるすまん』のせぇるすまんシリーズ第1作である『黒ィせぇるすまん』が連載化され、その後に週刊少年チャンピオンで始まったのが『魔太郎がくる!!』でした。 少年誌というフィールドでありながら、非常に残酷なシーンも混じえたサイコサスペンス・復讐譚は当時から大人気を博しました。70年代にチャンピオン黄金期が訪れる直前に『ブラックジャック』や『エコエコアザラク』のような作品が載る土壌を形成したパイオニアと見られることもあります。 『デトロイト・メタル・シティ』でも「恨みはらさでおくべきか」という曲が歌われていましたが、元々落語や歌舞伎で用いられていた「この恨み晴らさでおくべきか」というフレーズを流行らせたのも、この作品の功績が大きいです。 しかし、70年初頭にはよど号ハイジャック事件や浅間山荘事件などもありフィクション以上に現実でおぞましい事件が起き、更に少年犯罪の悪質化もあり、連載中に配慮が行われ内容が変遷していき最終的にはダークファンタジーとなりました。 また、何度か様々な形で新版が出版されていますが、最初の秋田書店のチャンピオンコミックス版以外は改変されたり削除されてしまったエピソードが多数存在します。すべての話が元のまま読める秋田書店版は現在プレミア価格で取引されていますが、もし機会があればぜひそちらで読んで頂きたいです。 とはいえ、改変されたバージョンでも面白く読めるのは確かです。可能なら比較して読むと一番楽しめるでしょう。

つづきはまた明日

あらすじを見て0話切り、ちょっと待った!

つづきはまた明日 ヒナチなお
sogor25
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イケメンリア充で文字通り女の子をとっかえひっかえ、座右の銘は「据え膳食わぬは男の恥」。そんな高校生・庄司奏大(かなた)が女の子から"ヤリ部屋"の美術準備室に呼び出されて意気揚々と向かうと、そこには"先客"とそれを外から覗いている他校の女子が。どうやら近くのお嬢様学校の子みたいで、声を掛けてみると一言、 『私はただSEXしてくれる男性を探しにここに忍び込んだだけで…覗きをするつもりはなかったんですっっ!!』(原文ママ) という、強烈な導入から始まる作品(なおここまでたったの6ページ)。最初読んだときもこの女子・九条美雪に対する「なんだこの"非実在女子高生"は!?」という印象が強すぎたんですが、これが読み進めていくとどんどん"純愛"の物語へと変化していきます。 見るからにチャラ男だった奏大が絵に書いたような世間知らずのお嬢様の美雪に惹かれていくというギャップ、もちろんこれも1つの要素なのですが、美雪がセックスにこだわる理由、お互い望んでるはずなのに何故か発生する2人がセックスに至るまでの駆け引き、さらにそれを見せながらグイグイ進んでいく展開で、ちょっと引き気味に構えて読んでいたのに気付いたら前のめりに物語に入っていってしまいます。 そして、1巻では4話収録しているのですが、3話でストーリーとしても作品としても1つの節目を迎えます。実は3話までは奏大視点で物語が進むのですが、4話で初めて美雪視点による物語が描かれます。この4話で物語の見え方が広くなり、さらに2巻以降の作品の雰囲気が一気に変わる仕掛けも用意されてます。なので、1話で興味を持って頂いた方はもちろん、あらすじを読んで「これは自分向けじゃない」と思って0話切りしようとした方も、まずは1話、できれば1巻の最後まで読んで判断してほしい、そんな作品です。 1巻まで読了