囀る鳥は羽ばたかない

ヤクザモノは読まんのです

囀る鳥は羽ばたかない ヨネダコウ
華子
華子

誰も知らない人などいない。 そんなBL漫画のレビューなど、今更要るのか?と、自分でもそう思うのですが、いいえ、書かせて下さい。 最近、読んだんです。 映画化かー、そんな面白いんだったら、読んでみよっかな。って。 そもそもヤクザモノは読まない。という自身の中の決まりによって、ヤクザモノにリミットをかけておったのですが、この作品をついこないだ読んで、読んだ翌日に、慌てて映画まで見に行きました。 もはや虜。 今更、虜です。 あら筋は、あらすじを読んで下さい。 矢代が変態と書かれておりますが、個人的にはあの漫画の登場人物で一番の変態は百目鬼じゃないかと思っております。 ゲイでもないのに、矢代が綺麗だと!? しかも、させ放題。 矢代よりヤバいのは百目鬼じゃないか。 などと思いながら読んでましたが、この漫画、素晴らしいのは、二人の心情も去る事ながら、その背景を彩る男達の物語なわけです。 ただ好きだ嫌いだと言い合う、恋愛漫画でないところ。 ここが味噌。 さらっと舐める程度で終わりません。 二人の葛藤の裏には、男達の生き様が描かれているのです。 どうでも良いですが、ワタシは三角ファン。 まだ読んでないという、ワタシの様な人には絶対読んで頂きたいと、そのように思います。

リリカ 抒情

陰に咲く花

リリカ 抒情 宮西計三
(とりあえず)名無し
(とりあえず)名無し

宮西計三は黙殺された才能なのだろうか。 きっと、そうなのだろう。 『ちびまる子ちゃん』のキャラ名に使われていないのだから。 …というのは、まあ、軽口の冗談として。 しかし、彼のそれほど多くない漫画作品を、こうして電子で簡単に読むことができるのだから良い時代ではある。 本書は 「79年ブロンズ社刊「ピッピュ」と81年久保書店刊「薔薇の小部屋に百合の寝台」から自選した物」 ということで、80年代初頭に花輪和一や丸尾末広に続く才能として一部から注目された早熟の異才を知るには、格好のものであると思う。 個人的には、けいせい出版から出た『金色の花嫁』が最も印象に残っているのだが。 とりあえず本書の「1巻を試し読み」をクリックしてもらいたい。 表紙画面から1ページ進むと、モノクロの総扉が顕れる。 寝台に身を横たえた全裸の少年の絵。 この絵にこそ、漫画家・宮西計三の異能が凝縮されていると信じる。 これに感応(=官能)するなら、ぜひ漫画へと進んでいただきたい。 ちなみにこのイラストは、上記『金色の花嫁』所収の「リアリティ」という作品の一部だと記憶する。自分は、この掌編が宮西作品のフェイバリットなのです。 すごい絵だ。 今見ても、心が震える。 名前の印象が近いせいか、宮西計三のことを考えると、いつも宮谷一彦を思い出してしまう。 一応「一時代を築いた」宮谷のマチズモとは、アンダーグラウンドに身を潜め続けた宮西のハイリー・センシティブな資質は随分と異なるのだが、それでも、漫画史の表舞台からこぼれ落ちた「幻の漫画家」として、このふたつの異能は似通ったところがあると感じているのだ。

足洗邸の住人たち。

人生を変えた漫画

足洗邸の住人たち。 みなぎ得一
ふでだるま
ふでだるま

好きな漫画はたくさんありますが 僕にとってこの漫画に出会えてよかったと1番思う作品はこの"足洗邸の住人たち。"です。 この漫画に出会って更に漫画が好きになり、そこから漫画を読む数が爆発的に増えてたことで漫画読み人生が始まりました。 平成一の妖怪作家みなぎ得一先生の最長編作品です。 デフォルメが効いた絵柄、洒落の効いた台詞回し、繋がる世界観、個性的なキャラ、深い妖怪知識等々もう全てが好みど真ん中で大好きです。 この話は「災禍の召喚術師」が引き起こした「大召喚」で人間世界と魔界、異界が重なった世界が舞台となってます。 主人公の絵描き田村福太郎が引っ越したアパートは猫又が管理人の足洗い邸。 福太郎と住人が織りなす日常パートと邸を守るバトルパートがメインストーリーとなります。 福太郎に隠された秘密と徐々に判明していく世界の秘密。 妖怪物が好きな方はマストで読んでほしい漫画です。 また、みなぎ先生の特徴としてクロスオーバー作家というのがあります。 デビュー作の『いろは草子』から『大復活祭』『足洗邸の住人たち。』『サクラコード』 現在連載中の『ルート3』まで全て同じ世界で物語が進んでいきます(時代は変わります) どれから読んでも面白いですが、最長編の足洗を基点に読むのもオススメです。

黒のもんもん組

「おっ いっちょまえに男色家だな」

黒のもんもん組 猫十字社
(とりあえず)名無し
(とりあえず)名無し

猫十字社という奇才がかつていたことを、もっと思い出さないといけない。 佳品『小さなお茶会』のほうが少し有名だとは思うのですが、やっぱり『黒もん』ですよ、『黒もん』! 例えば、今や大きな潮流となっている「BL」的なるものの前段としてのJUNEについてとか、その源流『風と木の詩』まで遡るタイプの言説は、それなりにあると思うのですが、少女漫画的「少年愛」を、「男色!」として破壊的なギャグで表現したのは、この猫十字社『黒のもんもん組』をもって嚆矢とする…とかいうテキストは、ほとんど見ないですよねえ。 でも、そういう意味で、山上たつひこ『喜劇新思想体系』や新田たつお『怪人アッカーマン』に並ぶインパクトですし、少女漫画ギャグ史的には、少年漫画史の巨大なる高峰『マカロニほうれん荘』に匹敵する重要性を持つ作品だと思うんです。 (連載時期的にも作風的にも、『マカほう』の影響は強いだろうなあ) とにかく、これだけ好き勝手やってる少女誌のギャグなんて、今はほとんど存在しない。 本当に、当時の『LaLa』は、ものすごいラインナップでした。 とはいえ、もう40年以上前の漫画になっちゃうのか…。 『黒もん』完全版というのが出ているのをマンバで知りましたが、やっぱり今の読者には『県立御陀仏高校』や『華本さんちのご兄弟』から入ったほうが、読みやすかったりはするのかもしれませんね。