たか
たか
2023/04/20
ネタバレ
カントリー、ジュブナイル、シスターフッド。
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田舎のどん詰まり閉塞感とその窮屈な世界で繰り広げられる地獄の人間関係が大好きなんですけど(『住みにごり』とか)。 自分もかつて暮らしていたクソッタレで不愉快な世界をフィクションとして楽しむのは、安全が保証された状態で恐怖を楽しむジェットコースターに乗るような、スプラッタ映画を鑑賞するようなスリルがあって好きです。 自分の手が届く範囲で、自分の人生と引き換えにしてでも悪をさばいて真子守った愛情深さ・意思の強さが本当に強く美しくて、だんだんと真実が明らかになっていくにつれて愛しさがこみ上げてきました。 “引力”で引かれ合う相手の生首抱きしめるシチュエーション大好きマンになので(ジョジョのせい)、美月が真子の首を切り離して抱きしめるところでエグいくらい興奮してしまいました。 1部のエンディングと同じ宗教画のごとき尊さ 「自殺じゃ悪は裁けない」。 兄の自殺から学んだ美月が、大好きな親友の死体をバラして、自分の人生を犠牲にしてまで成し遂げた報復。 ただの田舎の女子高生にどうしてそんな大それたことが出来たのだろう。 なんでそんな力ががあったんだろうと考えてみたとき、それはやっぱり「愛」なのかなと思います。 性愛だとか友愛だとか分けるのは野暮で愛だよなぁ、愛。 起こらないほうがいい悲劇だし、起きたとして本当は2人を襲った悪がもっと上手く裁かれる世界であるべきなんですが……。 こういう自分の人生を犠牲にしてでも誰かを守りたいという人間の意思は、本当に美しくて尊いとしか言いようがなく、読めてよかったなと余韻を噛み締めています。
たか
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2023/04/13
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名読切が連載化!一色まことが描く大家族ステップファミリー
ナタリーで新連載開始のニュース見てうわ〜〜!!となりました。 連載版の第1話は14歳になった村野家の三男・朝日と幼馴染の詩ちゃんのお話。 ヤングケアラーとしておばあちゃんのオムツの面倒まで見ている詩ちゃんはある日、奈央は実の母親ではなくステップマザーであると友人にバラしているところを、朝日とその友人の男子たちに聞かれてしまう。 謝ろうとするも上手く行かず、朝日からも男子からも「臭い」と言われてしまい……。 巻頭カラーで、近所で咲いている花畑を香りを「無料の香水」といってまとっている可愛らしいシーンが、詩ちゃんの生活ぶりを知ってしまうと180度意味が変わって見えるのが凄まじい。 絶妙に噛み合わない人間関係が中学生っぽくてじれったくて辛くて読んでてクキィ〜〜!!となりました。最高。 込み上げるエモさを抱えきれず、4年ぶりに読切版を読み返したら「どうしてこんなに素晴らしい読切を忘れていたんだ…!」と自分を殴りたくなるほど良かったです。(まぁでも内容を忘れて新鮮に楽しめたからOKです!) ▼読切版掲載号(ビッグコミックオリジナル7号 2019年4月5日号) https://bigcomicbros.net/magazines/4207/ https://manba.co.jp/boards/101915
たか
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2023/03/20
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著者を主人公にしたエッセイマンガ #読切応援
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※正しくは「エッセイマンガ風SFマンガ」です。未読の方はぜひこの感想を読まずそのままビッグコミックオリジナル 2023年7号を購入して読んでください。 最初の1ページ、「うわ〜!絵のタッチもいつもと違って朴訥としたシンプルな絵柄で超エッセイ漫画っぽ〜い!」と驚きすっかり思い込み、本当にうめざわ先生ご自身のご病気について描かれたエッセイマンガだと思って読んでしまったので2ページ目で衝撃を受けました。いやフィクションか〜〜〜い! この世界の一般的な人間は、食事・排泄・睡眠・他人の共感を必要とせず、48時間働くことができ、現実世界の人間の5倍の寿命がある。そのため現実世界の人間と同じ身体機能や性質を持つうめざわ先生は「オルビス・ティルティウス症候群」という障害者として生きている。 めっちゃ生きづらそ〜〜……。 自作グッズ(カトラリー)があるの、障害エッセイマンガでよく見る光景で解像度が高くて生々しい。 他人の共感を必要としないため、うめざわ先生以外の人々は発言に一切配慮がなく、一見理解の有りそうな存在の姉や医者がメチャメチャ残酷な発言してきて、上げて落とされる分怖かったです。 ものすごく示唆に富んだ作品で、この現実世界で生きづらさを抱えている人たちの視点で見る現実世界は、このSF世界と同じくらい醜悪で残酷なんだろうなと思わされました。 九井諒子先生の短編のオオカミ人間子育てエッセイとか『異星人の子を授かりまして。』とか、『エッセイマンガ風フィクション』が好きなのでメチャメチャ楽しかったです! これもいつか単行本に収録してほしい。
たか
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2023/02/22
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格ゲーJK×クイ研DKの異文化交流!連載してくれ〜!!! #読切応援
クイ研に所属している八乙女くんが教室にクイズの問題集を忘れ取りに行くと、クラスメイトの神田さんがハラハラと涙を流していた。気になって尋ねると、格闘ゲーム「リューファイ」にアプデがあり「中足の確認猶予が2フレ伸びた」そうで…? クイ研ゆえ名作「リューファイ」の概要は知っていた八乙女くん。 神田さんが熱く楽しそうに説明する様子に「この人面白いな」好奇心が刺激され、もっと理解したいと格ゲーについて質問を重ねていきます。 八乙女くんの理解力と知識欲、そして神田さんの熱意が噛み合い、同好の士ならぬ「異好の士」が新しい世界を学んでいく姿が気持ちいい〜! >神田さん「いやマリー・アントワネットかよ〜〜!! ケーキがありゃケーキ食ってるよォォ!!」 >八乙女くん「これって何で言うところの何!?」 (※門外漢ゆえ、八乙女くんが「100メートルのタイムが伸びた人に『自転車に乗れば?』」的なことを言ってしまった時の2人のリアクション) そしてすぐサッと、「クイズができても就職の役には立たないって言われるようなものかな…」と自分に引き寄せて考える八乙女くん。 知識と理性で頭がガチガチというわけでなく、ちゃんと相手の気持ちを想像できるところも素敵。 >八乙女くん「ゲーム内容はわからんが言ってることがわかるのは楽しい」 わかる。オタク友達がハマっているジャンルについて聞いてるときこういう気持ちになります。 もし神田さんが早押しクイズすることがあれば反射神経すごそう。 ラブコメとしても、格ゲー履修漫画としてもメチャメチャ良かったので連載化してほしいです…!!
たか
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2023/02/15
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最高にハッピーなクリスマス!! #読切応援
なんだこのイカれたサンタは〜〜!?最高だ…! 最近では『ゴールデンカムイ』、『ハイパーインフレーション』といった、ちょっと変な奴らが一生懸命に生き、信念や生き様や命のキラメキを見せてくれる作品が人気を博していますが、こちらもその2つに並ぶ素敵なお話でした。 西洋風のお洒落で可愛らしいデフォルメが効いた絵の魅力もさることながら、キャラの設定がどうかしてて本当に最高。 これからネタバレするので、未読の方は今すぐジャンプラに読みに行ってください。 https://shonenjumpplus.com/episode/4855956445087743328  ◇ ◇ ◇  殺人に快楽を覚える12歳の少女・サリーは、人殺しだけを殺す殺人鬼として世界中で活躍していたが、ある北国で捕まり死刑を待っていた。 するとそこにある男が現れサリーを連れ出すが、その正体はサンタクロース。 サンタは拡大する世の中のサンタへのニーズに答えるため、自らの身体にプラナリアの遺伝子を取り込み「分裂」することに成功。 彼の体を切り刻んでくれる人材を探していた――  ◇ ◇ ◇  ### プラナリアの遺伝子(迫真) もうこんなんどう考えても面白いし、 **「都会では真冬に凍死した人のニュースが流れるだろ?アレは分裂した私だよ」** (サリーに「痛覚とかあるの?」と聞かれ)**「バリバリあるぞい!!新鮮な反応が楽しめるぞ!!」** **「つまり私は…痛いとむしろ悦ぶんだ!!!」** などなど、サンタさんのパワーワードの切れ味がまたすごい。 こんなに変態的でメチャメチャなのに、このお話が最後に私達に見せてくれるのは、いろんな人間が居て清濁併せ呑むこの世界の美しさ。 ドMサンタに世界の美しさの片鱗を見せられて図らずしもグッと来てしまいました。 悔しい…。 (この辺に『金カム』『ハイフレ』と同じソウルがを感じました) 物語を紡いでいって最後に迎えるクライマックスの見開きが本当に素敵なので、ぜひたくさんの人に読んでほしいです。 てか本当に絵がかわいい〜。地味にシチューのお皿をサーブしてくれるトナカイさんとか、歌舞伎町で死んでるサンタの脇にいる猫(犬?)のクタッとした感じがメチャメチャかわいい。 南野夏雄先生お名前覚えました。