ANAGUMA2020/02/19ケルトモチーフのポリスアクションファンタジー兄と両親の命を奪った連続殺人鬼「パッチマン」への復讐を果たしたアラゴ。超常の力を用いてロンドンにはびこる怪事件に挑むスコットランドヤードの警官となった彼だがパッチマンの影はいまだ顕在で…というのが大筋の流れ。 徹頭徹尾王道のダークファンタジーです。 復讐譚が好きな人にはまず読んでほしいですがやはり『ARAGO』の魅力はファンタジックな怪異アクション!西洋のオカルト、伝説、モンスターがわちゃわちゃ出てきます。 メインのモチーフがブリューナクを始めとするケルト神話なのもちょっと珍しくて楽しいです。イギリスっぽいし。あまり聞き馴染みのないファンタジーアイテムが登場するだけでもテンション上がりますよ。 あとセスくんっていう敵なのか味方なのかどっちなんだいっていう好きな人にはたまらんタイプのキャラが出てくるので二面性に弱い人も『ARAGO』、要チェックです。ARAGO新井隆広2わかる
ANAGUMA2020/02/18部長と同じスタンスで読んでるけどかなり楽しい! 自分も部長と同じく洋画はそこそこ見るけど邦画はあんまり…というタイプなので邦キチが勧めてくる映画が全部気になってしょうがない! (『貞子3D』そういえば石原さとみだったな何故か…)とか劇場まで見に行くことはなかったけど心に引っかかっていた情報をザザーッとおさらいできるのでありがたいです。 Twitterやネットで話題になってたレベルでピックアップしてくれるのも個人的には身近で嬉しい。ミーハー万歳です。 まだ1巻しか読めてないのですが『ミュージアム』とか出てきたりしませんかね?(小栗旬が好きなので…)邦画プレゼン女子高生 邦キチ! 映子さん服部昇大1わかる
ANAGUMA2020/02/13ヤンデレストーカーとの仁義なき対決に挑む百合マンガクレイジーサイコなんとやらみたいなことばが一時期流行りましたけど、本作の田山さんもその系譜に名を連ねるキャラクターになる予感がビシビシきています。 田山さんに擦り寄られている主人公の花絵もヤンデレをダメにする女という感じでそこそこどうしようもない感がリアル。根が優しいせいで田山さんをつい甘やかしてしまうんですよね。いかんでしょ。 そこに現れた籠屋さんというイケメンが田山退治に偽装の恋人役を買って出たことで事態は泥沼の三角構造へ突入し…というところで2巻へのヒキ。 絵柄のキュートさが各キャラのポテンシャルを際立たせており独特の読み味になっています。 花絵ちゃんもカワイイがゆえに割とクソダメな人間性が垣間見えたり、逆に田山さんにも「あれ、カワイイのでは…?」みたいな瞬間が普通に訪れるのが怖い。読み進めると籠屋さんも絶対的存在ではないということが分かって安息の場所はないです。常にグラグラ。 まだまだとんでもない展開が巻き起こりそう…とにかく不穏な気持ちになりたいときにおすすめの百合マンガです。病月もちオーレ 箕田海道1わかる
ANAGUMA2020/02/12人はなぜ絵を描くのか #1巻応援それは絵上手くなってちやほやされて承認欲求を満たしたいから!!!(ドン!!!) 本書1巻の帯には堂々たるフォントで核心を突く答えが刻まれておりました。わかるみんなそうだよな。 身近に絵を描く人間が多い環境で育った人なら1巻を読むだけでも「あっ、あぁ〜〜〜〜!!」というシーンが無限に続くこと請負い!共感と羞恥と熱量がすごい勢いで押し寄せてくるぞ! キャラもみんなすげ〜〜〜〜「っぽい」んですよ…。 アニメーター志望のガチムチ伊藤くん、抜群にうまいけど人付き合いが苦手な宮田くん、すべてを兼ね備えた美少女絵描きカガリさん、絵よりも設定考えたりが得意なグラサンの田町くん…。居ますこういう濃いひとたちがリアルにも割と(※個人の環境です)。 ラブコメ的にも矢印の方向がしっちゃかめっちゃかになっているのが読んでて笑えます。現実だったら笑えないかもしれない(怖い)。 漫画家マンガや画家マンガ、アニメーターマンガに美大マンガ…世の中さまざまな「お絵描きマンガ」があるわけですが、ある意味本作ほど「絵を描く人間」の本質(生態?)を捉えた作品もないような気がします。 人間としての絵描きの姿が『SA07』にはまさに息づいていますよ!SA07津留崎優
ANAGUMA2020/02/10中国発本格百合マンガ到着!! #1巻応援「絵ェかわい〜〜〜〜!!!キレェ〜〜〜〜!!!(美!!!)」っていうのが第一印象でした。とにかくいい百合に言葉は不要。まずは味わおうな。 ヤンチャ系のスンジンがおとなしいチウトンに一目惚れするというド真ん中のガール・ミーツ・ガール。青春の甘さやドキドキがかわいいエピソードを積み重ねて彩られていきます。 ふたりの関係を中心に、周囲の友人のキャラも少しずつ掘り下げられていく流れは『ホリミヤ』っぽさもあったりして、日本のWebコミック文化に親しんでる人ならかなり好きなのではないでしょうか。 ちなみに原作は縦読みコミックっぽいので、書籍では4コマみたいな読感になるのが話の雰囲気にもマッチしてると思います。 中国・百合という話になると、陸秋槎先生が日本の作品からの影響や、中国の百合事情、「重百合/軽百合」の概念などを語られていたのが記憶に新しいですね。本作は軽百合でしょうか。参考リンク貼っておきます。 http://yurinavi.com/2019/10/24/riku-syusa-interview/ いずれにしても海外の百合文化圏からこのようなマンガが届けられたのは大変喜ばしいことに思えます。もっと来てくれ〜〜〜!SQ 君の名前から始まる壇九(TANJIU)4わかる
ANAGUMA2020/02/07「虫」によって導かれる切ない恋人間社会での生きづらさを抱えた潔癖症の男・高坂と不登校の女子高生・佐薙が少しずつ互いの心の穴を埋めながら惹かれていくという「年の差」ジャンルのマンガです。 ラブストーリーは正直得意ではないのですが、タイトルのインパクトと美麗な表紙に惹かれて手にとりました。結論から言うとすごいよかったです。 自分の感情が何者かによって作られたものだとしたら…というのは思春期を生きた者なら一度は考えたことがあるんじゃないでしょうか。 それでもなお人を愛せるのか、その気持ちに基づいた恋は本物なのか…というのが本作のテーマです。そこまでだとよくある展開ですが、もう一捻りあるのがゾクゾクするんですよね…。 おとなになって読むのと、中高生ぐらいの時分に読むのとでまた味わいも変わるんだろうな。見事なジュブナイルだと思います。 作画の方もあとがきで語られていましたが、物語に寄り添うかのように絵のエネルギーがグッと増していき、真に迫ってくる瞬間がとても心地よかったです。 高坂と佐薙、どちらの気持ちにもズブリと入り込める画面と物語の説得力に飲み込まれてしまいました。 どちらかというと自分も「希死念慮を抱えた薄幸の美少女なんて手垢のついた青臭いモチーフだぜケッ」と思っちゃうタチなのですが、読み終わる頃には感情プールに投げ出されて浮かんでいるような状態でした。完敗。 実は好きなのかもしれんこういうジャンルが…ということにちょっと気付かせてくれた意味でも、出会えてよかったと思える作品です。ありがとうございました。恋する寄生虫三秋縋 ホタテユウキ しおん1わかる
ANAGUMA2020/02/05ダイヤモンドで人を殴るヒロインは『ADAMAS』だけ!皆川作品としてはかなり貴重な女性主人公を描いた本作は、のちに『海王ダンテ』もともに手掛ける岡エリ(泉福朗)先生との初タッグ作品です。 Wikipediaによると岡先生は2巻から脚本に参加されているそうです。 https://ja.wikipedia.org/wiki/岡エリ スペシャリストを描かせたら右に出るものなしの皆川先生ですが、今回は宝石のエネルギーを引き出して超人的な能力を発揮する「ジュエルマスター」3人娘の物語。超視力や怪力、人を操ったりと王道の能力バトルが楽しめます。 本作を読んでから『ダンテ』を読むのもまた面白いですね。(『ADAMAS』にも不老不死キャラが出てきたりします) 女性主人公だから…というわけでもないかもしれませんが、敵のイケメンジェネラル・ジンとのロマンスもあったり、一味違う皆川作品を味わいたいときはコレ!ADAMAS皆川亮二 岡エリ2わかる
ANAGUMA2020/01/21いくつもある『エウレカセブン』の物語のひとつ『エウレカセブン』が作品によってストーリーや世界観、キャラクターの設定が異なるちょいと厄介なシリーズなのはファンなら周知の事実。 『ニュー・オーダー』は元はTV版放送完結時のアニメイベントで「51話」として公開アフレコが行われたオリジナルストーリーの朗読劇です。 映像は本編の再編集で、物語はそのイベントのためだけに作られたものという、非常に特殊なコンテンツでした。(今となっては『エウレカ』の作り方として定着した方法な気もしますが) そんなスペシャルなストーリーのコミカライズが放送終了から7年後に刊行されるというのもシャレが利いています。なんと言っても再編集でなくすべて書き下ろしですからね…。 それだけでもファンなら読む価値アリです。 『ニュー・オーダー』はエウレカがすべてを手放していく物語です。 ニルヴァーシュとの出会い、ゲッコーステイトとの出会い、そしてレントンとの出会い…。思い出を手放していく過程は、コーラリアンとしての悲しい運命が本編よりも色濃く出ているんじゃないかなと思ったりします。 そんな悲しいストーリーでも、深山フギン先生の絵がかわいらしくて、読んでいると「あぁ、間違いなくエウレカの物語だ」という幸せな気持ちになってしまう。 ラストカットは本編に比肩する尊さだと個人的には感じています。 『エウレカセブン』は沢山の物語がある分、何度でも楽しめるボリューム満点のコンテンツだと自分は思っていいます。 この『ニュー・オーダー』のコミックも、その厚みを増す役目を十二分に果たしてくれていますよ。交響詩篇エウレカセブン ニュー・オーダーBONES 深山フギン 大野木寛1わかる
ANAGUMA2020/01/21ストーカー狩りを生業とする骨太ダークヒーロータイトルの『私人警察』は現行犯であれば一般人でも「私人逮捕」が可能というところから来ています。 アメリカにはバウンティ・ハンターという職業があると聞きますが、日本を舞台にそのテーマをリアリティ持って描くのは多分いろんなマンガが苦労しているはず…。 その点本作はスタイリッシュな画風と確かな画面構成で説得力を担保しています。本当に絵がかっこいい。キャラデもサイコーだし。 個人的には主人公の麻木が強すぎないのが好きポイントのひとつです。 掛けているメガネは割れてるし、ストーカーと戦えば骨も折れるし、いつもボロボロなんです。 加害者への怒りを常に剥き出しにして自分の身すら顧みない一見破滅的な男ですが、被害者のためなら体を張ることを厭わないタフな正義の心を持っている…超クールな絵柄で描くのがこの泥臭い内面っていうギャップがイイんですよね。 アウトローヒーローが好きな人にはとりあえず読んでほしいです。私人警察小川亮1わかる
ANAGUMA2019/12/25『死がふた』の魅力が何なのかと言われると自分はミリタリーものが好きなので、ひとつはDOUBLE-S先生の精緻なタッチで描かれる剣撃、ガン・アクションの迫力です。(伊吹が乗るバイクのアクションもスゴイ) 盲目の剣士、土方護が座頭市さながら変態的な強さの敵を次々斬り伏せていくのはやはり爽快です。 もうひとつは多くのキャラクターが登場する群像劇であるということです。 護と遙の年の差バディを中心に、「THE WALL」をはじめとする秘密自警団エレメンツネットワークのメンバーや、敵サイドのトゥルス一味、果てはクロスオーバー作品である『ジーザス』『闇のイージス』のキャラクターが乗り込んできて、ダイナミックに関係性が展開されていくのはワクワクします。 MARVELやDCの作品を読んでいるときのような奔放な賑やかさが感じられて、結果的にはヒーロークロスラインの企画が最もいい形で出力されたのが本作だったんじゃないかなと思っています。 無限の広がりを感じさせてくれた『死がふた』ワールド、いつかまたなんらかの形で見れたらいいな…と願っております。死がふたりを分かつまでたかしげ宙 DOUBLE-S
ANAGUMA2019/12/24果たしてひとは「ヒーロー」になれるのか?民間人が犯罪者を逮捕し、その場で判決を下すっていう裁判員的な制度「徴正令」がテーマの本作。 徴正令の対象者に選出され「強制的に」ヒーローをやる羽目になった冴えないサラリーマン・青田とともに、読者は毎話さまざまな悪事を通じて善悪と正義について考えていくことになります。 なんといっても本作の魅力はとにかく地味ィ〜〜〜〜なこと!(※褒めてますよ!!!) 出てくる悪事はチカンとか下着ドロとか生活に密着したショボいものが多くて、だからこそ、そのしょーもない罪を犯したおそらく自分たちと大して差がないであろうひとの人生を、自分たちの意思で左右していいものかどうかがズッシリと(地味に)響いてきます。 なかでも、青田が大学時代好きだった先輩の結婚式で酔っ払って醜態を晒すっていう最悪のエピソードが僕は一番好きで。この回は本当にどうしようもない展開になっていくんですが、情けなさのリアリティが真に迫ってるんですよね…。 青田も主人公だからといってヒーローや「正義」にふさわしい人間では決してないんです。 登場人物全員、等身大のダサさと魅力を持っているので、読めば読むだけ親近感が湧いてきて、そんな彼らがなけなしの勇気を出して何かを決断した時、本当の意味でヒーローに「なろうとする」ときのカッコよさのギャップがじ〜んと沁みてくるんですよね。 3巻と短いですが、読み通せば「正義ってなんなんだろな〜」ということを薄ぼんやり日常の色んなシーンで考えるようになる…かもしれません。強制ヒーロー宮下裕樹
ANAGUMA2019/12/16ザ・スチームパンク!!「スチームパンク」という言葉を知る前にこのマンガを読んだので、「『蒸気探偵団』みたいな作品が好きなんだけどどうやって調べればいいんだ…!」というモヤモヤをしばらく抱えていた覚えがあります。 そのあときちんと『ビッグオー』とか『ブレードランナー』『銃夢』なんかを摂取しながら真っ当に育っていけたのも本作のおかげかもしれません。感謝。 レトロでインダストリアルな蒸気都市という世界観に加え、キャラクターのドラマがシッカリしているのが『蒸気探偵団』の大きな魅力です。 なかでも美少年怪盗ル・ブレッドと相棒ナースの蘭々のコンビはあとから超絶ファンが付いているというようなことを聞いて納得しました。(今思うと肩書を明記するだけですべてが腑に落ちるわけですが…) 全編通してフェティシズムと言うか、「こういうのが好き!!!」というひとへの心配りが利いているマンガです。 レトロフューチャーとかサイバーパンクとか、その辺が好きな人でまだチェックしていないのはもったいないので、読もう!!真・快傑蒸気探偵団麻宮騎亜
ANAGUMA2019/12/11ウザ怖カワイイ「猫ならざる猫」の生態ツイ4で連載のホラーポップな4コマがついに単行本になりました! 作者のコットンバレント先生はタイ在住のイラストレーターさんで、このカワイらしい絵柄で繰り出されるシュールかつ不気味でカワイイ猫(?)の生き様がもうたまりません。 増殖、怪光線、変形能力などなどスペックの高すぎるクリーピーキャットに振り回される人間の滑稽な有り様にクスクス笑いながらも「お、俺も猫的なものに翻弄されてぇ…!」と思わずにはいられなくなります。怖くてウザいのにカワイイんだな…形が猫だから…。 飼い主のフローラさんもキレイでちょっと抜けてるところもあって最高です。 まずは読んでみてほしい。 https://sai-zen-sen.jp/comics/twi4/CreepyCat/ また、おマヌケな展開ばかりかと思いきや1巻のラストでは普通にゾクッとするキャラが出てきたり…。 とにかくずっと浸っていたくなる世界観のマンガです! タイで鳴らしたあの店の店長も激オシだぞ!!(読めん) https://twitter.com/animate_otani/status/1204652781073653761CreepyCat 猫と私の奇妙な生活コットンバレント4わかる
ANAGUMA2019/12/06正統派のスタイリッシュ和風SF!まだ神さまが人とともに暮らしていた倭の国で、道士・役小角とその弟子ふたり組がさまざまな神さまと人智を超えた交流をしていく…というのが大筋のコンセプト。 草木の香りが匂い立つような、現世とはおよそ異なる濃密な大気を湛えた世界が高密度の筆致で閉じ込められています。 無駄のない、整理された描線でこのエキゾチックな空気感が生み出されていくギャップがたまらなくて…。表紙の題字なんかからも分かると思うんですが、超・オシャレなんですよ!スタイリッシュ! 物語の構成も王道の和モノファンタジーの妙味をおさえながら、随所で変化球が飛んでくるのが飽きさせません。 僕が一番気に入ったのが「神さま」の捉え方が、ほとんどSFをそのままぶっ込んだかのような自由さにあふれていることです。デザインも素敵。 起きる超常現象の演出も毎話ケレン味が効いているので、こういうジャンルに親しんでる方でも新鮮に楽しめるんじゃないかと思います。 とりわけ2巻分通してキマる物語のギミックは超テクニカル、和風SFココにあり! 続刊が待ち遠しい作品です。峠鬼鶴淵けんじ
ANAGUMA2019/12/05ネタバレクールな魅力の美麗パニックミステリー神木くんが出てる実写映画の予告編でタイトルは知ってたのですが、マンガにもなってたんですね。 表紙がめちゃオシャレだったので(カバー上部の明智さんの目元が最高)予習がてら、と買ってみたのですが「…こういう感じ!?」と予想を裏切られました。 映画の予告はかなりコメディチックに寄せててそれが印象強かったのですが、このコミカライズはゴリゴリ緊迫感のある山奥スリラー! キャラクターもぜんぜん違うんじゃないか…? https://youtu.be/FelT2zSjsi8 マンガ版は『屍鬼』とか『ひぐらしのなく頃に』のラインを行きながら、学生探偵・明智と助手・葉村のサッパリしつつも地に足ついたキャラクターの魅力で物語が展開されるのが読み心地バツグンです。 キャラデザと絵も最高で、表情、アクション、心理戦…何をやってても見栄えが決まりまくり。 とにかく線と画面の作り方がクールなんですよね…。1話の学食の見開きとかスゴイ。 https://shonenjumpplus.com/episode/10834108156657159045 そしてなんと言っても衝撃の1巻ラスト…この引きで続きを読まずに居るのはかなり酷。 巻末の原作者コメントを読むに、映画、マンガ、原作とどれも雰囲気違っているようすなのでちょっと全部チェックしたくなっちゃうな…。 こういうメディアミックスがもっと読みたい!屍人荘の殺人ミヨカワ将 今村昌弘
ANAGUMA2019/12/03ふたつの赤い靴がつなぐ青春の絆青春の瑞々しさ・ほろ苦さ・爽やかさにくわえて、若者の持つエネルギーの熱さ…。 ジュブナイルストーリーの魅力がたっぷり詰まったマンガです。 佐原ミズ作品は本作が初めてだったのですが、圧倒されてしまいました。 主人公・鉄宇(きみたか)とヒロイン・宝(たから)はバスケとフラメンコ、それぞれの夢に敗れてしまいます。偶然出会った彼らは、自分には似合わなくなったバスケシューズとフラメンコシューズ…お互いの「赤い靴」を交換します。 高校生になり、宝が新たにバスケを始めたことを知った鉄宇は、自身もまた彼女から受け取った赤い靴を履き、フラメンコ教室のドアを叩くことに…。 本作の多くの登場人物は過去に引きずられ、未来におびえています。 鉄宇と宝は靴と一緒に、互いの夢を交換することで、未来に向かって進んでいけるようになりました。 鉄宇が赤い靴を履いたことで「アイツががんばってるんだから、自分もがんばろう」と周囲のキャラクターも、みな少しずつ変わっていくのです。 一度くじけても、誰かと一緒なら新しい夢を追っていける…その姿に勇気づけられます。 6巻と短いストーリーではありますが、彼らの未来に思いを馳せながら読了した時の充実感、味わってみてほしいです。 末筆ではございますが、妹の銘椀(なまり)ちゃんが終始かわいいことを付け加えさせていただきます。 ホント健気でいい子でね…。鉄楽レトラ佐原ミズ
ANAGUMA2019/11/20大剣を背負った女武器商人と少年のダークな旅路そんな子連れ狼スタイルにピンときた人はまず読んでほしい一作。武器商人ガラミィ(※クソ強い)と家族の仇を追う少年ソーナの道行きを描くダークファンタジー。 まずもって表紙がアホほどカッコイイわけですが…。 七月鏡一先生原作だけあって銃器の描写は最高にこだわり抜かれています。 梟(ナイトオウル)先生のスタイリッシュかつ超高密度の作画で繰り広げられるアクションはとにかく見応えありすぎる。 旧文明の遺産として現代銃火器がジャンジャン登場して異形のものに火を吹くのにテンション上がらずにいられましょうか。 七月作品は『ジーザス』『闇のイージス』から入った身ゆえ、このジャンルで一体どういう感じになるのかドキドキだったのですが、安定感がスゴいです。 やはりキャラクターの心情描写と連動して重厚な戦闘が展開されるのは、ファンタジーに舞台を移しても変わらず! 力が欲しいときにもちゃんと汝に問うたりしてくれます。 物語もガラミィの持つ大剣と「鍵の書」の関係など、ファンタジーならではの壮大な謎が明らかになってきているところなのですが…。 ネックなのはずっと連載が止まっていること…。 皆さまなにか情報があれば教えてほしいです。 後生だ頼む…再開してくれ…!!牙の旅商人七月鏡一 梟
ANAGUMA2019/11/20ザ・ハードボイルド…それがクロちゃんという猫だ大人になって『ブラックサッド』というバンドデシネを読みました。ハードボイルドな黒猫の探偵ブラックサッドが主人公。骨太でビターな物語…実に素晴らしい作品です。 しかし。しかしだ。 我々はハードボイルドな猫を…それも黒猫を…他にも知っているんじゃないか…? そう、それがサイボーグクロちゃんです! クロちゃんはちょっぴりひねくれ者の黒猫で、ついでに不死身で最強のサイボーグです。 かつての仲間グレーやマタタビとの絆、電気スタンドのガールフレンドナナちゃんへの愛、異世界サバイバル編での誇りを賭けた死闘(※このマンガには異世界編があります)、辛い境遇に置かれたゴローとチエ子ら子どもたちへの想い…。 語り尽くせるものではありませんが、クロちゃんはいつも大切な誰かへのアツい気持ちを胸に秘めて戦っています。 不平不満を言いながらも、誰かが困っていたら必ず手を差し伸べてニヒルな笑みを浮かべて助けるのです。猫なのに。カッコイイ。 だから周りにはいつも賑やかな仲間が集っています。本人がどれだけ孤高を気取っていても…。 思えばこのハードボイルドな黒猫の生き様にずっと憧れている気がします。 クロちゃんはいつまでも僕のヒーローです。新装版 サイボーグクロちゃん横内なおき4わかる
ANAGUMA2019/11/13エジソンがヤバい…だけではない「人間讃歌」の短編集世界の奇妙な人たちの逸話を荒木飛呂彦と鬼窪浩久がマンガで紹介する風変わりな偉人(?)マンガ短編集。 事実は小説より奇なりと言いますが、実在の人物を荒木飛呂彦が取り上げて面白くならないはずがありません。 ニコラ・テスラに向かって「このスカタン野郎がアーッ」と怒鳴り散らす発明王エジソンの姿が有名だと思いますが、読んだ当時もかなりキレてるなと舌を巻いた思い出があります。 今となっては外道エジソンの人物像も割と普及してる気がしますが、1989年の時点で荒木先生がここまで完成させてたわけですね。 個人的に一番好きなのは『ウィンチェスター・ミステリー・ハウス』。 銃火器メーカー・ウィンチェスター社の社長夫人サラは、人命への罪の意識に苦しみ、生涯に渡り「悪霊から逃れるため」自身の邸宅を増築し続けたことで知られています。 夫の手掛けた銃が世界中に広まることは歴史の必然のようなものであり、彼女にはどうにも防ぎようのない出来事でした。 手の届かぬ因縁に人はどう立ち向かうのか、という『ジョジョ』のテーマでもある問いかけが本作にも通底しているのです。 いずれの短編も、とんでもない人物たちへの驚嘆、畏敬の念を綴った荒木イズム満点の紛れもない「人間讃歌」の物語です。 可能であれば初回刊行時の函入り単行本で読むと味わいが増すような…気がします! 実に奇妙なデザインなので。変人偏屈列伝荒木飛呂彦 鬼窪浩久
ANAGUMA2019/11/12「エリア51」に無いものは無い「あったらいいな」って思うものが描いてある物語が好きです。 自分が子供のころはまだ超常現象ブームの残り火が輝いていて、中学生の時にX-FILESをCS放送で追っかけて観たのは人生におけるひとつの原体験です。 UFO、UMA、超能力、心霊、都市伝説…。 存在するかわからないけど「あったらいいな」と思うとドキドキが止まらなくなる。 『エリア51』にはそれが「ある」のです。 ショボいオバケから全能の神々に至るまで、この世界にポンと現れたらこんな感じかもしれない。超常特区エリア51の中では彼らは異質なモノでありながらも、とても身近で親密な隣人として存在しているのです。 探偵マッコイと相棒のキシローのコンビは、そんな異常が日常となった世界をタフに生き抜いています。 奇妙な住人たちのあいだをドタバタ走り回りながら、とんでもない存在と当たり前に渡り合う…夢見た光景に心躍らずにはいられません。 全巻通して「次は何が見れるんだろう」というワクワクが途切れることはないでしょう。 エリア51には「あったらいいな」と思う、あらゆるものが「ある」のですから。エリア51久正人3わかる
ANAGUMA2019/11/08ふたりだけの時間が生む巨大な感情を見てくれ…!映画館でアニメの予告を見て「ハイパー爽やか百合作品じゃん…!」と思って履修したんですが、想像の200倍くらいクセ強めのマンガでした(最高ではある)。 人付き合いが苦手な森谷さんが手に入れたのは1日のうち3分間だけ時間を止められる能力。 人から話しかけられたときにその場を去ったり、かと思うと人の秘密を覗き見たり、小心者なんだか大胆なんだかわからない使い道を楽しんでいました。 そんな彼女だけの世界に、クラスいち華やかで社交的な村上さんが「入門」してきたことで物語が動き始めます。 時間停止中に村上さんのスカートめくってパンツ見てたのがバレた森谷さんは(何をやってんだ)村上さんの望むままに時間停止を行使し、さまざまな「いけないこと」に付き合わされていきます。 森谷さんも読者も一貫して村上さんというファム・ファタールに翻弄され続けるわけですが、森谷さんが村上さんに惹かれ、関係を築こうとする姿は純粋で、ほとんど涙ぐましいほどです。 村上さんの行動の不穏さと不安定さゆえ「どうにかこの関係がなんだかよくわからんがふたりにとってベストな形でうまいこといってほしい」…そう願わずにはいられなくなっていくのです…。 トリッキーな構成にドギマギしながら読み進めたのですが、最終2話を読んだあとには思わず腕を組んで唸りながらふたりの感情を噛み締めてしまいましたよ。 感情が…あるのだ…ここに。それもデカいやつが…。ふたつ…。 とにかく2巻一気に読んでふたりの関係と感情の行く末を見届けてほしいです。フラグタイムさと4わかる
ANAGUMA2019/11/06偉人の力で怪獣と戦うジュブナイル・ビルドゥングス・SFアクション主人公のしおちゃんは女子高生。織田信長の偉人遺伝子が宿り「ノブナガン」として宇宙怪獣から世界を救う戦いに巻き込まれていくのですが、JKでミリオタで作戦参謀まで務めるっていうギャップが効いてます。 久正人作品らしくアクションのかっこよさ、偉人の逸話や能力を使った戦闘のギミック、怪獣のディティールや掃討作戦のカタルシスは文句なく最高です。久正人×宇宙怪獣の組み合わせに間違いがあるわけがない…。 『ノブナガン』がとりわけ魅力的だなと思うのは、しおちゃんの成長を描くビルドゥングスロマンでもある点でしょうか。 (甘酸っぱいラブロマンスもあるぞ!) 人付き合いが苦手で「オタク」として孤立しがちな彼女に手を差し伸べる親友にしてヒロイン、浅尾さんとの関係は読んでいるこちらが恥ずかしくなるほどにかわいらしく、そして美しいものです。 しおちゃんは浅尾さんのために銃を取り、やがて仲間と手を取り合うことを学び、最後には全人類のため、愛する人とともに戦います。 ひとりだったしおちゃんの世界が広がっていく、そのキッカケになるのは他ならぬ浅尾さんなのです。 自分はこの作品、かなり正統派のセカイ系マンガなのでは?と読んでいたのですが、壮大なストーリーの中心には必ずしおちゃんと浅尾さんの物語が据えられていたからだろうと思います。 特に終盤、進化侵略体との決戦が近づき戦闘がスケールアップしていくのと対照に、決着へ突っ走るための力強いエンジンとして彼女たちのミクロな関係性が描写されていくのは圧巻の快感があります。 パワフルなストーリーと巨大な感情が全6巻のなかにギッチリ詰め込まれてます。ボリュームたっぷりの一作、ぜひ読んでみてほしいです。ノブナガン久正人6わかる
ANAGUMA2019/10/29超クオリティのコミカライズ映画見て刺さりまくったのでマンガにも手を出させていただきました。これは…すごいコミカライズなのでは…? 田中将賀さんのキャラクターデザインで自分が一番好きなのは影の処理です。 陰影を大胆に捨象しズドンと斜めに切り落とすかのようなシャープな影指定。このコントラストの効いた表現は氏の代名詞と言っても過言ないように思います。 本作は驚くべきことにその影すらも省略されています。 にも関わらず圧倒的に田中デザインを再現して見せている。それがすごい…。 マンガでは「色」が使えないので、明暗と色彩の二軸の強弱を白と黒の一軸のグラデーション内で表現しなければいけません。 アニメーションの色彩と陰影は、本作では「白」の明るさと繊細なトーンコントロールに置き換えられています。 色がない世界で色の明るさと鮮やかさを表現するのに、影を取り払いながらも元のデザインの魅力を活かし切る…誠に恐れ入りました。マンガの絵はつくづく情報量の操作なのだなと…。 「空の青さ」が本作においても爽やかに披露されるのを楽しみに2巻を待ちたいです。空の青さを知る人よ蜷川ヤエコ 超平和バスターズ1わかる
ANAGUMA2019/10/23リアリティのあるディストピア社会を描くさまざまな仮想社会を描いた短編が3本収録された短編集。 萌えキャラを象徴と仰ぎ「リア充アジー」を弾圧する一党独裁国家、鼻歌を歌うだけでも厳罰となる知的財産権管理が超厳格な社会、母親とつながった臍の緒を切ると死んでしまう「臍子」の居る世界…。 いずれも大胆かつ緻密な世界観設定で、読むのに僕はかなり頭使いました。 秀逸な設定と連動してキャラクターの心がグラグラと揺れ動くことで物語が駆動していくのですが、そのリアリティがすごい。 「ありえるかも」という絶妙な法律や制度が仮想されていて、それを受けたキャラクターが「こう感じて、こう行動するだろう」という感情の表出に説得力があります。 自分は本作を読んで『リベリオン』という映画が頭をよぎりました。特に一作目の『善き人のためのクシーノ』などは、おそらく意識して描かれていると思うのですが。 『リベリオン』では制度を守る人間を主人公に据えることで、制度の内側からその歪みと悪辣さを指摘し、社会の閉塞状況を打破することをある種反証的に肯定していました。 『えれほん』においても同様の構造が採用され、読者は制度に囚われた人物の視点で、その欺瞞と息苦しさを反芻し、世界のあり方を仮想する箱庭的な思考実験に望むことになります。 『リベリオン』では現状の制度を否定し、異なる社会を提示する「外への働きかけ」が首肯されますが、本作では物語の結末は徹底して登場人物個々が「内へ潜心」することで決着するのが非常に印象的でした。 乱暴にまとめれば、彼らは「気持ちひとつ」で制度との関わり方を変えていくのです。 息苦しいことやネジ曲がった制度をスカッとブチ壊す物語はいくらでもありますが、本作の登場人物たちが見せるこの捉え方はとても魅力的に思えました。簡単に答えを出さず、ちょっとのことでは世界は変わらないけど、それでも踏ん張って思考を重ね続ける姿は非常に前向きで、僕は大好きです。 簡単なハッピーエンドと言えるものはひとつもなく、禅問答のような作品群ですが、圧倒的な読み応えがある一冊です。えれほんうめざわしゅん4わかる