サザエさんの作者である長谷川町子長谷川町子のエッセイ漫画です。

生い立ちやサザエさん創作秘話だけでなく、歴代のペット リマスター・エディションペット達や旅先で出会った人々の思い出など、盛りだくさんかつユーモラスに描かれています。

特筆すべきは!作者のお母さんです。早くに父が病気で亡くなり母一人で娘三人を育てることになるのですが、この母の行動力がすさまじい。

まず上京。そして、次女の町子を漫画家・田河水泡田河水泡、長女を洋画家・藤島武二、三女を小説家・菊池寛菊池寛に弟子入りさせます。

ビッグネームばかりでビビりますよね。

母の破天荒なエピソードはたくさんあるのですが、晩年はボケて娘の顔が分からなくなってしまったことも描かれていて、老いを見る作家の目を感じます。

終戦の翌年に地方紙で始まったサザエさんの連載ですが、作者としては本業は家庭菜園、漫画はアルバイトだったそうです。

そういう気質もより多くの人に寄り添える国民的作家としての器かもしれません。

サザエさんの作...

こんなにも素晴らしい傑作が、知る人ぞ知る名作として埋れている……
果たして、このままで良いのか?

否ッ!
断じて否ッッッ!!

一人でも多くの漫画やSFを愛する人に!
そして、この残酷な世界で人生に悩む方、悲しみの淵に暮れている方に!!
この至上の愛の物語はもっともっと読まれるべきなのである!!!

そんな万感の願いを込め、使命感を持って、今回筆を執っています。

 
 

確かに、この『愛人』というタイトル。
ヤングアニマルという掲載誌。
そして、この表紙。
「低俗な成人向け漫画かな……?」と敬遠してしまう気持ちも、解らなくないです。

ですが、それは大いなるミスリードに掛かっているのです!

愛人と書いて「あいれん」と読むタイトル。

そこからは一見して想像できない程に、深遠で重厚なテーマや想いが詰め込まれた、未来SFとなっています。

何せこの作品、創られ方が凄いです。

19991999年。
世間ではノストラダムスの大予言を中心に終末論が蔓延していた時。
そんな時代に、連載が始まりました。

時勢に沿ってか、人類が通常の生殖機能を喪い種としての終わりを迎えつつある世界を描いて行きます。

そして、一度の休載もなく2002年連載終了。
ここまでは良かったのです。

しかし、待てども待てども出されない最終巻。
何と、連載が終了してから最後の5巻が出るまでには二年以上も掛かりました。

何故か?
それは田中ユタカ田中ユタカ先生が全身全霊を賭して、改稿・加筆作業を行っていたからです。
今作のラストは、雑誌掲載版とコミックス版では大きく異なった物になっています。

コミックスで加筆修正が行われる、それ自体はよくあることよくあることですが、それに二年が費やされるというのは極めて異例です。

普通に商品として漫画を考えるならば、『愛人』は失格でしょう。

しかし、視点を変えて、一つの作品として考えた時には違って来ます。
その二年間が素晴らしい作品の輝きを、更に途轍もない領域まで磨き上げたと言っても過言ではありません。

今回、この稿を書くに当たって、改めて精読しました。
全編面白いのですが、やはり5巻の部分は格別であり、至高です。

一度築き上げた物を全て崩し、死に物狂いで改めてこの結末を持って来た田中ユタカ先生に対し、私はあらゆる賞賛を惜しみません。
熱い涙無しに読むことなんて、絶対に無理です!

ところで、漫画が好きな人。好きな人なら、一度位は自分で漫画を描いてみたいと思ったこともあるのではないでしょうか。

マンガソムリエソムリエである無類の漫画好きの私も、多分に漏れずそんな経験があります。
結構本気で、丸二ヶ月間あらゆる余暇を捨て去り、平均睡眠時間3時間を切る程に根を詰めて、一作を描き上げました。

その時に、自分はこの生活を一生続けるのは無理だな、と諦めてしまったのですが……。

しかし、そんな僅かな時間の中でさえも実感したことがあります。

登場人物に絶大な辛苦を強いる際には、自分でも不可解なほどに嗚咽が止まらなかったり、怒りで情緒不安定になったりするのです。

多くの作家、『ONE PIECE カラー版ワンピース』の尾田栄一郎尾田栄一郎先生なども、キャラクターを描く時には感情移入し、同じ気持ちになりながら同じ表情で描くといいます。
それを考えると、『愛人』の壮絶なるクライマックスと格闘している時の田中ユタカ先生は如何許りだった事か……

田中先生は、『愛人』の連載が終わった後は自分の中に漫画を描く能力が無くなってしまったといい、実際暫く何も描けなかったそうです。
これだけの作品であればそういう事も起こるだろう、と読めば自然に納得できます。

ネタバレになるので語れませんが、一線を画す愛が『愛人』では描かれています。
どこまでも残酷でありながらも、果てしなく美しい世界が、呈示されています。
常に死が共に存在する中で、尊き生への頌歌が謳われています。

こ、ここまで描いてしまうのか……と、半ば放心してしまうような凄味があるのです。
これ位途方も無い作品を描き上げられたら、私なら人生に悔いが無くなるでしょう。

……本当はその凄さを赤裸々に語りたいんです!
でも語れない……

嗚呼、もどかしい!

さあ、早く読んで、誰かこの素晴らしさを語り明かしましかしましょう!!

恐らく生涯顔を合わせることのない、それでもこの世のどこかで一度しかない人生を懸命に生きている誰かに届けば、そんな嬉しいことはありません。

そして、田中ユタカ先生。
こんな大傑作を描いて下さってありがとうございます!

 
 
通常版と特別版がありますが、空白の二年間のメイキングを含んだ濃厚なインタビューが掲載されている上下巻の愛蔵版をお薦めします。


こんなにも...