まみこ
12ヶ月前
幾つかある「江戸前の旬」のスピンオフ作品。と言うか、「別冊ゴラクスペシャル」なんて、どこにも置いてない雑誌(超失礼)に掲載だったので、単行本が揃ってから読みましたよ。 主人公、田ノ上水産二代目の田ノ上蒼、って本編でも全然記憶にないキャラだったので、慣れるにはちょっとかかりましたね。本編の舞台「柳寿司」の仕入先も、河岸をめぐる人達も、基本、柳葉旬の奥さん、藍子の実家「朝岡水産」ですし。 ですが、柳葉旬、藍子、工藤和彦、吉沢大吾ら、本編のレギュラーメンバーは、一通り登場しますし、「柳寿司」で柳葉旬が調理するシーンも多いので、外伝/スピンオフ作品の中でも、一番本編に近いですね。実際、本編でも柳葉旬が殆ど登場せず、周りのキャラだけで回す話もちょくちょくありますので…。 主人公は、ガタイが良くて力持ち、大食漢で、おせっかい焼き、押しが強くて、行動力とバイタリティは人一倍強い。「江戸前の旬」の登場人物は、大概おせっかい焼きなんですが、この主人公は、それが頭一つ抜けていますね。 「近くにいたら、ウザいだろうな…」と思う人もいるかもしれませんが、まぁ、フツーにウザいです(?) この作品には出てきませんが、現状、イタリアンバル、カジュアルフレンチ、小規模割烹等々、多少気の効いた店では、こと鮮魚に関しては産直相対取引で仕入れちゃうんですよ。 河岸の仲卸の目利き、みたいなのは、相対的に存在意義が薄れている、と言うか大半が幻想でしょう。「流通の都合上の調整弁」以上でも以下でもない、と言う、夢も希望も浪漫も無いのが現実です。 だからこそ、この主人公の、産地と、調理人を結び、食べる人に美味しい魚を食べて欲しい!という熱意が、ウザさを突き抜けて仕事の矜持にまで昇華されている、この作品の描写は良いですよね。 インスタントな食生活を送っていると、ついつい忘れがちな、海産物とそれを取り巻く食文化、もう一度見つめ直すには良い教科書、とも言えるのではないでしょうか。 そういう視点で読み返すと、主人公のウザさも…、やっぱちょっと気になるんですけどね(?)