兎来栄寿
1年以上前
「スペクタクル・ルネサンス人体解剖(アナトミカル)ロマン」と、なかなかすごい公称が銘打たれた作品。 今でこそ社会的地位の高い医者という職業ですが、理髪外科医の主人公・トトを通して往時の身分の低かった医者のありようを読んで学べる物語です。 多くの人は、医療といえばイメージとして科学的なものを想像するかもしれません。しかし、いわゆるEBM(Evidence-based Medicine:根拠に基づく医学)のようなものが普及してきたのはつい最近のこと。100年も遡らなくとも、世界ではロボトミー手術が行われそれに対してノーベル医学賞が与えられてきたわけです。 それより更に昔の中世において、宗教的な価値観が非常に強かったころには、とんでもない誤解に基づく治療が罷り通っていました。その実例である「瀉血」と「焼灼」の凄惨な様子は、試し読みできる第1話から描かれます。 宗教的な価値観が非常に強い時代背景の中で、常識を超えて圧倒的な正義のようにされている事柄に対して疑いを持ち果敢に挑んでいく様は『チ。ー地球の運動についてー』を髣髴とさせます。 ″「でも」「もしかして」は「可能性」だ!!″ と、真理を探究していくトトや、彼の協力者となるレオナルド・ダ・ヴィンチの狂気じみた熱量が読んでいて快感です。 高城玲さんはこれまでに何篇か短編も描かれていてそれぞれに魅力的でしたが、連載でも遺憾なくパワーを発揮されていると感じます。本作の続きと共に、短編集の発売も楽しみにしたいです。