どうすれば友達になれる?「綿谷さんの友だち」を読んで考える

どうすれば友達になれる?「綿谷さんの友だち」を読んで考える

中学・高校時代を振り返ってみると、今の自分よりも経験値がめちゃくちゃ低いはずなのに「昔の自分すげーな」と思うのが、「普通に友達がいた」ということ。今だったらたぶん同じようにはやれないんじゃないかなー。

もしかしたら「意識せずに自然と友達ができていた」というのはとても無邪気な考えで、「友達が欲しい」と意識していたクラスメイトのコミュニケーションをただ受け身の姿勢で受け止めていただけだったのかもしれない。

そういう、誰もがやっているはずなのに意識してできる人は意外といない「友達を作る」というテーマについて描いたマンガが、今回紹介する大島千春綿谷さんの友だち』です。

高校3年の春、クラス替えをしたばかりの教室から物語は始まります。

誰とでも打ち解けられるタイプの女子・山岸知恵は、新クラスに入るなり旧友と軽口を言い合い、その場にいた新クラスメイト・飯田さんともあっという間に距離を縮めます。新クラスは誰でも緊張するものですが、とはいえ高校に入って通算3回目のクラス替えなので、慣れてる子は慣れてるわけで。

その山岸さんの隣の席になったのが綿谷さん。知らない子だったので、さっそく山岸さんは話しかけます。「自己紹介にさりげなく軽いジョークを入れる」という、距離接近テクニックを駆使しつつ。

ところが綿谷さんの反応は。

綿谷さんは、相手の言葉を額面通りにしか受け取ることができない。言葉以外の要素、つまり「空気」を読んで対応するということができない。それゆえに今までのクラスでは浮いた存在になっていて、きっとそれゆえに「友達が欲しい」とも思っている。

すべての言葉を真に受けるため、クラスメイトどころか先生にまで「ヘンなやつ」だと思われてしまう綿谷さんに、山岸さんは「あんた何でも言葉通りなんだもん」とズバリ言います。そこで言い返す綿谷さん。

ここ、すごくグサッと来るんですよね。

「言葉をそのまんまの意味でしか捉えられない」というと、最近の風潮だと「発達障害」というカテゴリにやすやすと入れられてしまうのかもしれないけど、いやいや、それ以前に私たちはコミュニケーションの多くを「空気」に依存しすぎなんじゃないか。空気の読み合いで人間関係作って、本当に晴れ晴れとした気持ちで学校生活を送れるのか。空気を読むのはちょっとしたTipsくらいのはずだったのに、気がつくと空気を読むことがすべてにおいて最優先されているんじゃないのか。そういう過剰な空気の読み合いが、マナー講師が暗躍するこんにちの状況を招いているのではないか(飛躍)。

綿谷さんのいないところでは、クラスメイトは綿谷さんのことをこんな風に言っている。山岸さんは空気が読める子なので、そこでは特に反論したりしないわけですが、しかし何かモヤモヤしたものは残る。

そんなとき、コーラをグビグビ飲みながら「ダイエットしたい」とこぼす山岸さんに、綿谷さんが思わぬ一言を。

都合の悪いこと、空気に合わないことも平気で口にしてしまう綿谷さんだからこそ、山岸さんはこの一言にハッとさせられてしまう。なんでもない一言なんですけどね。

でもこのマンガを読んでいると「言葉で相手に気持ちを伝えるのっていいな」「話をしながらお互いに理解しあうのっていいな」という、めちゃくちゃ普通のことの良さに気付かされるんですよね。

綿谷さんみたいな子がどこにでもいるとまでは思わないけど、でもここに出てくるようなシチュエーションは、きっとみんな多少なりとも経験があると思うんですよ。一つの作品としても楽しめるし、自分の過去の記憶がマンガと重なって感慨にふける瞬間もある。これはそういうマンガだと思います。

ところでこのマンガ、構成もいいのです。目次を見てくれ。

ここで紹介した山岸知恵さんを皮切りに、いろいろなクラスメイトが登場してきます。それぞれの事情やバックボーンを抱えたクラスメイトたちと、綿谷さんはどう交流し、どうやって友達になっていくのか。2020年の春に発売予定という2巻も今から楽しみです。

現在、連載ページでは第1話から第3話まで試し読みできるので、気になる人はまずこちらから。

というわけで、大島千春綿谷さんの友だち』おすすめです!

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