『鬼滅の刃』無限列車編の次に来る列車バトル漫画は『麻雀バクチ列車!』だ!

劇場版『鬼滅の刃』無限列車編が2020年10月16日に公開されており、公開一週間で107億円という前人未到の記録的大ヒットとなっています。『鬼滅の刃』の魅力については今さら私が語るまでもないことですが、今回の劇場版の副題にもなっている戦いの場である「無限列車」については少し話を広げてみたいと思います。

列車・電車を舞台でのアクションシーンがある映画作品というのは、崖へと向かって加速し続ける機関車上での駆け引きに手に汗握った『バック・トゥ・ザ・フューチャーpartⅢ』のような超名作の他にも、近年ではゾンビものと掛け合わせた『新感染 ファイナル・エクスプレス』や、カイジがなぜかピエロに変身して電車内でバトルを繰り広げる妄想シーンがある『カイジ 動物世界』という中国版実写映画など、枚挙に暇がありません。また、少年漫画においても、『ジョジョの奇妙な冒険』第5部のフィレンツェ行き超特急や「からくりサーカス」の大陸横断鉄道など、数々の名勝負が生まれてきました。ああ素晴らしき列車上の高速移動バトルアクション。

ただ、私が人より詳しいとしているジャンルは、肉体的なバトルアクションとはやや縁の薄い麻雀漫画です。「列車上でのバトルの話をする」「麻雀漫画の話をする」、両方やらなくっちゃあならないってのが麻雀漫画ブロガーのつらいところです。しかし、こうして文章を書き始めている以上、そんなことは覚悟の上です。そんな悩みを一発で解決する麻雀漫画が存在するのですから! それが、『麻雀バクチ列車!』原恵一郎です!

この『麻雀バクチ列車!』は、あくまでコンビニ版の単行本が発売されたときのタイトルであり、雀聖・阿佐田哲也の『麻雀放浪記』を大胆な解釈で再構成した意欲作『麻雀放浪記 凌ぎの哲』が元々の作品名となっています。

作画の原恵一郎先生は後に、「アカギ」からの狂気のスピンオフと言われる『ワシズ-閻魔の闘牌-』で大ブレイクしましたが、それ以前にもこうして原作がある麻雀漫画を連載していたのです。この『凌ぎの哲』ですが、コアな麻雀漫画ファンにはとても人気があったものの、いかんせん時代がまだ原先生に追いついていなかったため単行本の売り上げはあまり良くなかったらしく、こともあろうに単行本の発行が7巻までで打ち切られるという目に遭っていました。しかし、その後に発行元の竹書房は「コンビニ売りの廉価版コミックス」という麻雀漫画の売れる場所を見つけたおかげで、単行本ではなかなか売れずに発行が打ち切られていた隠れた名作が掘り起こされ始めました。その流れから、『凌ぎの哲』の単行本未収録部分も『麻雀バクチ列車!』というタイトルで発売されるに至ったのです。ちなみに、タイトルだけではなく表紙デザインなども目を引くようにと大胆に変更されており、背表紙や裏表紙には作中には一切登場しない人面魔列車が描かれています。フェニックスの尾で一撃死させるぞw

そんな麻雀バクチ列車ですが、それが生まれた表向きの理由としては、「警察は縄張り意識が強く県境を越えては手を出してこないため、賭博場を移動式にすれば警察に踏み込まれることもなく安心して高レートの賭博場にできる」という理に適ったものになっています。さらに、麻雀バクチ列車の奥のコンテナでは、麻雀で飛ぶ(=点数が無くなる)ことになってしまったら、走行中の列車から3分以内に自ら飛び降りなければならない、というさらにムチャなギャンブルが行われており、主人公達はなんやかんやでそこに参加することになる、というストーリーになっています。

『麻雀放浪記』が原作なので、主人公は皆さまご存知「坊や哲」なのですが、週刊少年マガジンで連載していた『哲也』のような、クールでたまに不器用な優しさを見せるようなツンデレを想像しちゃいけません。原恵一郎先生の手にかかればこんな極悪人顔になってしまいます。


『麻雀バクチ列車!』(原恵一郎,阿佐田哲也 竹書房)より

まぁこれは、宿命のライバル・ドサ健の裏切りによって一度列車から飛び降りさせられた所を命からがら戻ってきての表情なので、ドサ健の方も悪いのですが……。

他にもドサ健や李億春やダンチなどの愉快な奴ら(「同類」ではあるが「仲間」というわけではない)とともにこの麻雀バクチ列車に挑むことになってしまう哲ですが、主人公がこうなら敵だってさるものです。

『麻雀バクチ列車!』(原恵一郎,阿佐田哲也 竹書房)より

まずは上弦の弐くらいの強さで勝負の場を取り仕切る中ボス・三井さん。常人以上の感覚を得るために自ら列車から飛び降りて、その時にケガした左目には闇医者に何か適当な動物の目を移植させられてしまい、こんなステキなビジュアルになったそうです。この麻雀バクチ列車のコンセプトも三井さんがこの時に思いついたのかもしれませんね。顔が動物という点は嘴平伊之助と共通していると言っても過言ではないですが、勝負の最中でも髪型を気にするオシャレボーイな一面もあります。絶対に親父の敵を討つぞ!

『麻雀バクチ列車!』(原恵一郎,阿佐田哲也 竹書房)より

そして、このバクチ列車のラスボスがブー大九郎さん。

両目を自ら縫って盲目になるのと引き換えに、超人的スピードのすり替え技術や人間離れした聴力・味覚などを得ただけではなく、人間ポンプのように身体の中に麻雀牌でもなんでも潜ませたり、釘や歯を口から超高速で吹き出して武器にするなど、まさにラスボスに相応しい最強の雀士です。もはや人間じゃない。セリフ回しからして完全にラスボスのそれです。「安いのはあなたの腕ですよ」なんてのはまだまだ優しいセリフで、物語が進むともっと恐ろしいセリフを吐いてきます。


『麻雀バクチ列車!』(原恵一郎,阿佐田哲也 竹書房)より

「死に物狂いでかかってくるがいい!!」

「うぬら3人、物言わぬ肉片にしてくれるわっっっ!!!」

RPGのラスボスかよ! 麻雀漫画のキャラが言うセリフじゃねーだろw 最終的には自分のことを「神」とまで言い出しますが、そのラスボスとしての迫力は言葉通りで、鬼舞辻無惨もかくやというスケールの大きい敵キャラだったものです。

ここまでわりとネタ的な部分だけ取り上げてしまいましたが、イカサマを中心とした敵味方入り混じっての独特の駆け引きや、機関車と同様に圧倒的な高テンションで突っ走る物語や台詞回しは最っっっっっっ高に面白いです!!!!! 無限列車の次にはぜひ『麻雀バクチ列車!』も読んでみてください! 麻雀をあまり知らないという方には麻雀漫画はやや敷居が高く感じるかもしれませんが、勝負はイカサマや駆け引きがメインのため、麻雀の細かいルールまでは分からなくても楽しめると思いますよ。

最後に、大正コソコソ噂話!

「週刊ヤングマガジンで「サタノファニ」を連載中の山田恵庸先生( @yamadayoshinob)は権々会編からバクチ列車編まで原恵一郎先生のアシスタントをされていて、ブー大九郎が死んだシーンの背景を描いていたらしいですよ。禰豆子、ビックリだな?」

「ムー!(驚)」

「禰豆子、今度『麻雀バクチ列車』と一緒に『サタノファニ』も読もうな!」

「ムー!ムー!(喜)」

 

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話題に出た作品のクチコミ

t2
t2
2020/05/19
生まれて初めてジャンプを買った話
私は、幼い頃から漫画が好きだった。定かな記憶ではないが、初めて読んだ漫画は星のカービィとポケモンの四コマ劇場だったと思う。その後も、週刊少年ジャンプの漫画を中心に数々の作品に読み触れていった。 私は週刊少年ジャンプを買ったことがなかった。読み始めた小学生の頃から、読むのをやめた高校生の頃までずっと、隣に住む従兄弟のお兄さんに貰って読んでいたのだ。読み始めた頃には、アイシールド21でまだデスマーチが行われていたし、愛染もまだ良い人だと思っていた。テコンドーを題材にした漫画がすぐに打ち切りになってしまったり、リボーンやムヒョ、銀魂、SKET DANCE、ToLOVEる等等の作品が輝きを放っていたりと、沢山の漫画に囲まれていたあの頃を懐かしく思う。成人した今でも漫画は好きで、継続して読んでいる作品も少なくないが、週刊少年ジャンプの世界はもう私の知るところにはなくなってしまっていた。 鬼滅の刃を読もうと思ったのは別に奇跡でも必然でも数奇な巡り合わせでも何でもない。私がこの作品を読み始めた時には既に19巻まで刊行され、TVでは社会現象的な人気と報道されるほどの一大ムーブメントな作品として周知されていた。情けない話だが、私という人間は天邪鬼で人気で話題の作品ほど読むことを躊躇い、敬遠する。いつからこんな厄介な人間性になったのか…… 連休を迎える前、職場の後輩くんが「もうすぐ完結するかも」と、教えてくれたことで今が丁度良い頃合いかもしらんと思い、この度鬼滅の刃を読むに至ったのだ。 私が漫画を読んで泣いたのはこれが二回目だった。 この作品は、鬼狩りと呼ばれる鬼殺隊の青少年たちが、家族や友人の仇となる鬼を殲滅するまでのお話で、各登場人物が信念を胸に文字通り命懸けで鬼に立ち向かっていく。 3巻ほど読み終えた時の印象は、「サンデー作品っぽい」というところだった。想起したのは犬夜叉とうしおととら(こちらは未読)で、"妖怪奇譚"モノという印象を受けた。心地よいコメディ調、可愛らしいデフォルメ顔、インフレを起こさない"考える戦い方"に惹き込まれていった。 少年漫画から暫く距離が空いていた私がこの作品で感じたのは、"敵が強すぎる"ということ。ONE PIECEのアラバスタ編のように味方陣営、敵陣営ともに一人ずつが各人を相手に戦っていくスタイルに馴染みが深かった私は、「上限の鬼強すぎるぞ……」と、登場人物同様に絶望した。鬼滅の刃の戦いは基本的に鬼の首を斬り落とすことに注力して進んでいく。ただ、鬼が強すぎてまぁ斬れない斬れない。そこで現れるのが心強い味方。それも一人じゃなく二人。場合によっては何人でも味方が駆けつけて共闘してくれるのだ。まさに物量作戦!と思ったが、そんな糞みたいな冗談では片せないほどにこの作品のキャラクター達は生命力に溢れていて、強く優しい。どんなにボロボロになっても折れることなく進み続ける。弱きを助け悪しきを挫く彼らのその姿は、私がかつて憧れたジャンプヒーローそのものだった。 主人公・炭治郎は真っ直ぐでクソ真面目でとにかく優しい心の綺麗な少年。共に闘う仲間たちは勿論、命のやり取りをした鬼でさえも、炭治郎の温かな優しさに触れてしまえば、忘れていた大切なことを思い出してしまうのだ。その優しい炭治郎もまた、様々な人の優しさに助けられ、自らを奮い立たせ、どんな窮地でも諦めることを選ばなかった。誰かに守って貰ったように、自分も誰かを守る。優しさの連鎖は絶ち切れることなく繋がっていく。数珠繋ぎになり循環し、滅ぶことはない。 ONE PIECEのチョッパーの出自の話で泣いたのは小学生の頃のこと。齢二十五にもなった自分が漫画を読んで何度も泣いてしまうとは思わなかった。そのことに気恥ずかしさもあるが、少し嬉しくも感じた。素晴らしい少年漫画は、次話を渇望させる。コミックスで読み始めた私が、ジャンプ+のアプリで本誌を購入してまで続きを読んだように。サラリーマンの自分が月曜日を待ち遠しく感じるなんて有り得なかった。人生で最初で最後になるかもしれないが、私は週刊少年ジャンプを買いに行った。 ありがとう鬼滅の刃。 心を燃やせ。赫い刃を。折れない心を。 (204話で完結と思ったら205話で完結だったので結局二回買うことになりました)
TKD
TKD
2020/09/22
『ジョジョ』の基本思想が詰まった始まりの部
大ヒット漫画『ジョジョ』の 記念すべき開幕を告げる部 ではありますが、 ファンの人でもわざわざ読み返すことは あまりないのではないでしょうか? 私の周りでも「1部が一番好き!」 という人は1人もいません。 確かにその後の部に比べて バトルも地味なものが多く 現代から見ると時代を感じるキャラクターが多いので若い人たちが見ると 物足りなさを感じてしまうのは 仕方ないことだと思います。 しかし、今回久々に読み返して 私はビックリしました! 第1部にはこの後30年近く貫かれ続ける 「ジョジョの基本思想」が 詰まっていたのですッ! それは3巻で語られる ツェペリさんの3つの教えです! ①相手の立場に身を置く思考。 ②「勇気」とは怖さを知ること  「恐怖」我がものとすること。 ③「成長」には犠牲が付き物  「犠牲」成長につなげられる人間こそ   美しい人間である。 おそらく『ジョジョ』はこの3箇条をもとに 作られているのでしょう。 相手の立場に身を置くことで、 敵キャラの造形を 細かく描写することができる。 そして、「恐怖」を我がものとする。 つまり、克服しようとするからこそ 「ホラー映画」に影響を受けた シーンづくりをする。 そして、ジョジョたちが犠牲を成長に つなげていくからこそこの漫画は 「王道」なのだと思います。 これらの基本思想があり、 そして、ジョナサンの正義漢としての描写も 少し過剰ではありますが、 キチンと入っています。 このジョナサンの過剰なまでの 「いい子」「正義漢」描写があったから 後のジョジョはどんなに不良でも ジョナサンの子孫だからという 土台の安定感から ヒーローとして自然に 読者に迎え入れられる のではないでしょうか? そんな感じで、あの『ジョジョ』の 始まりの部がただの旧時代の 漫画の訳がありません。 一回読んだだけで その後読み返してないという人は 是非一度読み返してみてください! 自分の好きな 『ジョジョ』のエッセンスが 生まれた瞬間を 何個も発見できると思います!
野愛
野愛
2020/10/25
鬼滅ミリしら状態で一巻だけ読んだ感想
ジャンプの漫画ってマサルさんとジャガーさんとアイズしか読んだことない気がするし、流行りすぎちゃって乗っかるタイミングを見失っていたのですが読む機会を得たので読んでみました。一巻だけだけど。 ・強くなりたい、が目的ではなく手段なのがよい 妹を助けたい優しい子っていうのがとてもよいですね。このままでは妹を守れないという気づきを最初に明示するのも素晴らしい。覚悟とか強さとか守るとかフワッとしているけれど物語の根幹になる概念を明確に示しているので、炭治郎とともにこちらの心持ちも変わっていけるのがよいなあと思いました。 ・死はいつだって辛く悲しいもの 結構グロテスクな描写が多いなあと。敵を倒すことはただの過程として捉えてしまうけれど、命を奪うってとんでもないことなんですよね。敵とは言え鬼とは言え、命を奪うことがしっかり悲しみを持って残酷さを持って描かれているのがかえって優しいなあと思いました。 ・単純にグッズとか売れそう アイコニックな色合いがいいですよね。緑と黒のあの色合い見るだけで鬼滅だって思うもんね。天才。 ほぼミリしら状態で読んだけど確かに面白いなあ、売れる理由もわかるわあと思ったんだけど、これが鬼滅だけのものなのか売れてる少年漫画あるあるなのかはわからないのでなんとも言えないのが困ったところ。でもわたしくらいの知識しかないひとも読んでハマってるんだろうからやっぱり凄いんだろうなあ。