新九郎、奔る!

走る、じゃなくて、奔る!

新九郎、奔る! ゆうきまさみ
名無し

奔走ってのは、物事がうまくいくようにと 駆け回って努力することだそうで。 「ゆうきまさみ先生の作品にハズレなし」 と思っているので期待していましたが、 この題名や、第一話の最初の数ページで、 やはり、ゆうきまさみ先生は面白い、と思いました。 もうね、最初の見開きでの 名告りを上げる新九朗と、従者のツッコミ?や、 それから数ページ先に11歳の新九朗が登場するという 流れだけで、もう色々と話の筋を想像してしまいます。 27年間も雌伏のときを過ごす物語なのかな、とか、 題名からしても翻弄されて奔走する物語なんだろうな、とか。 新九朗という名前って実名らしいけれど、 心苦とか苦労とかを引っ掛けて題名にしたのかな、とか。 ただ第一話の数ページ後からは、延々と、 馴染みのない時代の話が続きます。 制度や世相や、官職名や名前すらわかりにくく覚えにくくて 読み進めるのに少々時間がかかる。 けれどもこれはむしろ、ゆうきまさみ先生の作品だから、 まだわかりやく展開されている、と思います。 他の作品に比べると、強烈なギャグとか少ないので 少し退屈な展開にも見えてしまうけれど。 いや、随所にゆうきまさみ先生らしい 愛嬌のあるシーンが出てきて面白いですけれどね。 おそらく話の展開としては、数巻分の話を経た上で 最初の名告りをあげるシーンに回帰して、 さあいよいよ新九朗が思うがままに暴れだすぞ、 という展開になるのでは、と思います。 そうなったら、それまで溜めた分だけの 爆発力は凄いだろうと期待しています。

強制ヒーロー

果たしてひとは「ヒーロー」になれるのか?

強制ヒーロー 宮下裕樹
ANAGUMA
ANAGUMA

民間人が犯罪者を逮捕し、その場で判決を下すっていう裁判員的な制度「徴正令」がテーマの本作。 徴正令の対象者に選出され「強制的に」ヒーローをやる羽目になった冴えないサラリーマン・青田とともに、読者は毎話さまざまな悪事を通じて善悪と正義について考えていくことになります。 なんといっても本作の魅力はとにかく地味ィ〜〜〜〜なこと!(※褒めてますよ!!!) 出てくる悪事はチカンとか下着ドロとか生活に密着したショボいものが多くて、だからこそ、そのしょーもない罪を犯したおそらく自分たちと大して差がないであろうひとの人生を、自分たちの意思で左右していいものかどうかがズッシリと(地味に)響いてきます。 なかでも、青田が大学時代好きだった先輩の結婚式で酔っ払って醜態を晒すっていう最悪のエピソードが僕は一番好きで。この回は本当にどうしようもない展開になっていくんですが、情けなさのリアリティが真に迫ってるんですよね…。 青田も主人公だからといってヒーローや「正義」にふさわしい人間では決してないんです。 登場人物全員、等身大のダサさと魅力を持っているので、読めば読むだけ親近感が湧いてきて、そんな彼らがなけなしの勇気を出して何かを決断した時、本当の意味でヒーローに「なろうとする」ときのカッコよさのギャップがじ〜んと沁みてくるんですよね。 3巻と短いですが、読み通せば「正義ってなんなんだろな〜」ということを薄ぼんやり日常の色んなシーンで考えるようになる…かもしれません。