リングにかけろ1

今読んでも1巻の試し読みだけで泣ける

リングにかけろ1 車田正美
さいろく
さいろく

姉ちゃん…姉ちゃん;x; 主人公高嶺竜児、ヒロインは実の姉となる高嶺菊。 拳で語るのみの本作だが、この後に控えた聖闘士星矢が小宇宙を燃やしセブンセンシズに目覚めないと超えられないぐらい生身の人間たちが限界を突破しまくる少年漫画の常識を揺さぶりまくったジャンプ黄金期(初期)の代表作。 黄金期に関しては諸説あると思うので正確には未だそこは違う!とかあるかもですがw ギャラクティカマグナムは当時リアルタイムで読んでた世代ならきっと撃ったことがあるだろう(ごっこ遊びで) 自分の場合はペガサス彗星拳でしたが。 必殺技、というのは本当に少年の心をいつの時代も掴んで離さないもので、そのハシリと言っても過言ではないこの作品では主人公やライバルたちが皆超かっこいい必殺技を持っています。 竜児のブーメランフック、河合さんのジェットアッパー、石松のハリケーンボルト(スパイラルタイフーンってどこからだっけ?)、そして志那虎のローリングサンダー。 私は志那虎が好きだったのですが(かっこいい)イケメンは河合さん。 ※志那虎が若かりし頃に狂気じみたマシーンのせいで大怪我をした後、父親にローリングサンダーを見せるところは狂気じみてて素敵なので必見です。 今見るとどこもツッコミ満載な感じで最後まで突っ走りますが、本当に胸アツな彼らの血まみれなボクシングは日本中の少年を虜にしたと聞いています。 リアルタイム世代じゃないのが少し悔しい作品。 2の方にもレビュー書きましたが、今挙げた4人+剣崎は日本を代表とするボクサーなので、是非今の世代のボクシング好きの人たちは一読していただいて、同じくボクシング好きのおっさんたちに話を振ってみるといいと思います。 画像は志那虎の若かりし頃と問題のマシーン。

水は海に向かって流れる

読んで良かったとシミジミ思える作品

水は海に向かって流れる 田島列島
六文銭
六文銭

3巻完結作品だと、読むのに躊躇しますよね。 広がるだけ広がった風呂敷に、回収されな伏線・・・そんなものが、あったらどうしようと思うと、手を出すのに勇気がいりますよね。 でも、安心してください。本作は大丈夫です。 田島列島先生の、この空気感、唯一無二だなと感じます。 セリフの一つ一つ、場面展開による独特の間のとり方、ストーリーの進み方、どれをとっても、作者の個性がピカリと光って、だからこそ好き嫌いも出そうですが、自分はドンズバでした。 少しづつこじらせた人間関係の妙味が、面白いんですよね。 物語上必要な「設定としてのキャラクター」みたいなのがいなくて、リアリティというか、皆イキイキしていて読んでいて共感できるんです。 怒りたくても怒れない。どうにもならない、やり過ごすしかない状況。 わかるわーと思いながら、主人公と榊さんを見守ってました。 主人公の自分がいなければ、という罪悪感が、 自分がいたことで幸せになった瞬間は、なんとも言えない幸福感に包まれました。 心の底から、本作に出てくるキャラ達に感情移入していたのだなと痛感しました。 何度も読み返したくなる作品です。

NARUTO―ナルト―外伝~七代目火影と緋色の花つ月~

サラダのルーツを描く外伝

NARUTO―ナルト―外伝~七代目火影と緋色の花つ月~ 岸本斉史
ANAGUMA
ANAGUMA

『NARUTO』本編終了後から『BORUTO』開始までの時系列の間には映画『THE LAST』や小説の列伝シリーズなどさまざまな作品が名を連ねています。 本作『七代目火影と緋色の花つ月』もそのひとつで『BORUTO』の映画と同時期に単行本が刊行されました。なんとなく夏のアニメ映画っぽくてかわいいタイトルだなと思います。 しかし内容はと言うと、サスケの娘・サラダの生まれに迫るなかなかシビアな内容。連載中も話題になっていましたが「サラダの母親、サクラじゃないんじゃないの…?」というちょっと生々しい話も出てくることに…。 家になかなか帰ってこないサスケ(この概念が面白すぎる)に愛想を尽かしたサラダがナルトに懐いていくのも涙を誘います。サスケ、そういうとこだぞ。 ナルトやサスケ以外にも『NARUTO』キャラ沢山出てくるのでアイツ今こんなことしてんだ…っていうのが楽しめるのもいいですね。 『BORUTO』も本作もテーマになっているのは家族。果たしてサスケは失った娘の信用を取り戻せるのか、ラストシーンに最高の答えが用意されています。 サラダが火影を目指すことになった理由が描かれるオリジンストーリー、『BORUTO』に手を出す際には合わせて読んでおくのがおすすめです!

サスピション

サスペンスに満ちた短編集

サスピション 手塚治虫
一日一手塚

表題の『サスピション』シリーズ3作を中心にサスペンス色たっぷりの短編集です。3作はどれも20p前後と短いながらも人の心の行き違いが生む皮肉な結末がスリリングに描かれるのが特徴です。 ロボットを使った完全犯罪を目論む「ハエたたき」、山奥に住む男と金貸しとの命の駆け引きを描いた「峠の二人」など、人の猜疑心や臆病な心が思わぬ結末に向かっていくのが読んでいてハラハラします。 なかでも自分の一番のお気に入りはカバーイラストにも採用されている第3話「P4の死角」でした。 P4レベルという最高度セキュリティの研究所で行われる遺伝子実験中、作業員が誤って実験用のDNAを体に注入してしまうところが物語の始まり。隔離措置を取られ、防護服を着た研究員に囲まれるようすは臨場感があります。 このリアルな描写が後半効いてくるのでじっくり味わってほしいですね。 彼の体は一体どうなってしまったのか…というところが物語のキモなのですが、コンパクトに纏まっているのでなにか説明すると面白さが半減してしまうもどかしさが…。 とにかく読んでみてほしいです。手塚治虫の物語の構成力、人の心情の描写力が高密度で味わえます。

ヒットマン

早くもラブに発展しそうな漫画業界マンガ

ヒットマン 瀬尾公治
mampuku
mampuku

 「涼風」「風夏」など傑作ラブコメの山を築き上げてきた名匠・瀬尾公治先生の新作はまさかのお仕事モノ、しかも主人公は漫画編集者、ヒロインは漫画家。  自らの掲載誌を題材にした漫画といえばまず思い浮かぶのは「バクマン」ですが、処変わって作者も変わればここまで違うかというまったくの別物。「バクマン」は作家同士の横のつながりやアンケート順位レース、生き様としての男のロマンを追求する熱血ぶりで、ときに展開がとっ散らかって見える「ライブ感」のような雰囲気も特徴でした。「ヒットマン」のほうはというと主人公・剣崎が社会人ということもあってかテレビドラマみたいな印象です。シュージンやサイコーが年中引きこもって机にかじりついていたのと違い、ヒットマンのコンビはいきなり取材と称して温泉旅行へ行ってしまいます(もちろん読者サービスも兼ねているとは思いますが)ずる賢くて打算的だがド熱血なシュージンたちと、青臭く不器用だがどこか肩の力が抜けている剣崎はやはり好対照です。  これからどう描かれていくか気になるのは、主人公たちがバクマンと違って大人であることで、原稿料や印税などお金の話や、作家の生活の部分の描かれ方がどうなるのか。バクマンでもお金の話には触れてはいましたがそこまで深くは踏み込まれませんでした。  「少年マガジンを再び日本一の雑誌に」というアツいテーマが掲げられていますが、日本一だったころのマガジンを読んで育った私としてはこみ上げるものがありますね。

アゲイン!!

未来がわかる=絶望

アゲイン!! 久保ミツロウ
六文銭
六文銭

タイムスリップ含む広義のループものが好きなので、 本作も最初は読んでたいたのですが、途中で挫折。 (8巻あたりの演劇の所) 終わりってどうだったけかな?と気になったので一気に読んでみました。 このきっかけは、久保ミツロウ先生の作品って、 毎度、え?これで終わり?的な感覚を残されると、 そこかしこで言われていた(主に読者レビュー)のを目にしたから。 本作も同様のことが言われていた。 自分自身、好きな作家さんなので、作品には全部目を通しており、似たような感覚は経験しているからよくわかった。 だけど、本作を読んでわかったんす。 あくまで個人的な意見なのですが、久保ミツロウ先生は 「最後だけ決めて描いている」 んじゃないかってこと。 最後にこれだけ伝えたい! ってことがあって、そこから物語をスタートさせているじゃないかってこと。 物語のつくり方としては、ある意味正しいのですが、 久保ミツロウ先生の場合、最後だけがバッチシ決まってて、その勢いで舞台や設定が決まり、導入に戻り、そして勢いが続かず中盤がちょとダレる。(失礼) そして、ダレた中盤から、まくしたてるように結末に向かうから唐突感がすごいんだろうと。 そう考えて読むと、妙に納得ができ、理解が深まったんです。 (繰り返しますが、個人的な感想です。) 本作で言えば、最終巻が言いたいことの全てだと思います。 自分の中では、タイトルのとおり。 未来がわかると、人は頑張らなくなる。 どうなるかわからないから、あれこれ悩み、考え、がむしゃらになったりする。 例えそれが良いものであって、悪いものであっても、未来がわかることは絶望なのだと。 それが言いたかったのかな~と思いました。 結局のところ、繰り返すこと、やり直すことー「アゲイン」ーに、あまり意味はなく、未来がわかったからといって、本質的には何も変わらないのです。 最後の今村がそうでしょう。 そこから、他の巻のエピソードを読むと、自分的には得心がいきましたよ。 その中で、だからこそ何度やり直しても変わらない「思い」があるってとこには、グッときましたね。 また一つループものの名作に出会えました。

声優ラジオのウラオモテ

JK声優、喧嘩しつつ高み目指す! #1巻応援

声優ラジオのウラオモテ 巻本梅実 二月公 さばみぞれ
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

お仕事漫画でライバル同士が、火花散らしながら高みを目指す物語は、昂るものがあります。アニメの現場はプロ意識の塊のような場所だと思いますが、声優さんも、プロ意識高いですよね。 声優さんの意識が垣間見られる場所として「声優ラジオ」があります。フワフワ喋っているようで、時々生々しい本音でトークをする声優さんが好きです。そんな「声優ラジオ」に、女子高生で、しかも同じ学校・同じクラスの二人が起用される……というのが、このお話。 声優ラジオというと、ふんわりした仲良しトークが普通です。この二人のラジオも表面的には仲良しキャピキャピトークですが、実際の二人は物凄く険悪。方やギャルの陽キャ、方やぼっちの陰キャ。何かというと喧嘩ばかり……ちょっと引く位の刺々しさ、荒み具合。 しかし「アイドル声優」として、可愛さを売りにする為に素の自分を隠しているのは一緒。そして仕事人としての意識が高いのも、共通している。 その上で、ラジオの収録・公録、作品の現場を成功させる為に、互いの意思をぶつけ、苦手なところを支え、相手に負けまいと高みを目指す二人は、次第に互いを理解していく……その過程を追う程に胸高鳴り、のめり込んで読んでしまいます。 陰キャのツンっぷりが物凄くて正直怖いのですが、徹底的なツンの後にポロっと出るデレが、威力抜群!陽キャと一緒に心グラグラ揺れまくりです! こんな二人をアニメ化したら、誰に声を当ててもらおうか……と、かなり真剣にメタな事を考えながら読みました。