デイズ・オン・フェス

パーリィピーポーも納得のリアリティ! #完結応援

デイズ・オン・フェス 岡叶
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

ANAGUMAさんが未経験の立場から本作の魅力を語られていて、ついつられて全部読んでしまったので、こちらからは経験者から見た本作の魅力を書いてみたいと思います。 ……フェスの入場口でリストバンド付けて、ステージに進んでいくと、向こうの方からズンズンって、低音が響いてくる訳ですよ。うわぁって小走りになって……1巻の初フェスのワクワクする描写、これ私知ってる。 かつてフジロックに6回行っている私が保証します。この作品、めっちゃリアルです! 例えばテント泊の朝が蒸し暑い!みたいな細かなあるあるが沢山あります。フェス前にフェス用プレイリスト作るよね。また渋谷のライブハウス側のコンビニの山盛りのゴミ箱とか、そんな細かな事が物凄く懐かしくて……よく知っている人ほど嬉しくなる描写がそこに。 新しい音楽との出会いと、何でも受け入れたくなる開放感。あんまりバンドを知らなくても、ダンスが下手でも、若くても歳取ってても、大体の人が何かしら楽しめる。空は広いし飯も旨いし、みんなフレンドリーだし、本当にミュージシャンにも会えるし……トイレとか虫とかは確かに問題だけれど、それさえ気にしなければ、極上の祝祭空間がそこに!……というのも全部描いてある。 大きいフェスに関してはメトロックやROCK IN JAPAN FESTIVALなど、日本人バンドメインのとっつきやすいフェスをモデルにされている一方、小さなフェスに拗らせ男子が好きそうなマニアックさがあったり。日本のフェス、数も種類も豊かになったのだなぁと、しみじみさせられます。 登場するバンドの、ジャンルや音色はほぼ描かれません。「音楽」ではなく、ジャンルや好みを超えた祝祭空間……あらゆるパーリィピーポー(party people)に開かれた「フェス」を描く事が主目的なのだと思います。 初心者・玄人それぞれの楽しみ方、ライブアクトで盛り上がった後ひとり余韻を楽しむ感じ、そして特にアウトドア趣味の方がフェスに行きたくなるような内容、ファッションや細かな持ち物まで、フェスのリアルと楽しさをこれでもかと描いた作品。 そしてフェスの無い日常を、フェスを目指して生きるパーリィピーポー達の物語を描き、厚みのある内容の全5巻!

A・O・N

今夜「線」を超えろ!!!!

A・O・N 道元宗紀
みど丸
みど丸

プロレスをインチキと断ずる少年が最強のレスラー「アオン」になりすまし全国のレスラーに宣戦布告、真のファイトとエンターテインメントを追求する…というふうに書くとシンプルな話のスジにきこえますが、読むとなかなか曲者で独特。独特、というのが『A・O・N』に最もふさわしい言葉な気がします。 存在を知ったのもその手のマンガに詳しい友人から「パワーがすごい打ち切りマンガがあるから読んでみてくれ」と薦められたのがきっかけでした。確かに話の運びが強引すぎたり、主人公に気持ちが入りづらかったり、連載が10話で終わってしまった理由は正直言って読めばなんとなく察せます。 一方で全10話の全コマから気迫みたいなものが迸っているのも事実。クセは強いんだけど抜群にうまい絵とか、流れはなんか違和感あるんだけど勢いにあふれた台詞とか、「今それやる!?」っていう展開に全力振り絞ったりとか…。 このマンガにしか無いような圧力というか、エネルギーが備わっていて、これも読んだ方にはわかっていただけるはず…。 少なくとも自分は強烈なインパクトを受けました。気になった方にはぜひ今夜「線」を超えて読んでみてほしいです。

タイガーマスク

白いマットのジャングルに今日も嵐が吹き荒れる

タイガーマスク 梶原一騎 辻なおき
さいろく
さいろく

ルール無用の悪党に正義のパンチをぶちかませ とありますが、パンチはプロレスでは反則となります。 (歌詞を記載するのはNGなんでしたっけ?) タイガーマスク世代ではないのですがプロレスファンとしてプロレスを語るのに外せないタイガーマスクのお話。というか原作ですね。 実在したプロレスラーであるタイガーマスクは新日本プロレスが当時海外修行に出していた佐山サトルという若手の天才(イギリスだったかな?で東洋人だからということでブルース・リーのような黄色いジャージに黒ラインの衣装で現地でも大人気だったそうです)を日本に呼び戻し、講談社・梶原一騎と正式なタイアップとして実現させてヒーローを具現化するプロジェクトにより誕生した本当のヒーローです。 当時のプロレス人気は凄まじく、日本全国でタイガーマスク旋風が巻き起こっていたとかなんとか。 当時の映像をNJPW WORLDという新日本プロレスの公式動画配信サービスで見ることが出来ますが、タイガーマスクは他の選手と比較にならない動きをしてます。本当に圧倒的に違うし、一人だけ格ゲーのキャラみたいな動きをバンバン繰り広げていく様は今見ても体幹・センス・スピード・運動神経のレベルが常人のそれを遥かに上回っている事がわかります。一度見てみてほしい。 タイガーマスクで大成功を収めた新日本プロレスですが、当のタイガーが相手がいなくてつまらん、こんなルール(プロレス)では最強になれないので最強を目指すため辞めます!と言って人気絶頂のところで本当に辞めてしまい非常に困った状態になってしまったのでした(初代タイガーこと佐山さんはここから総合格闘技の前身とも言える修斗(シューティング)を創設、後の格闘技界に多大な影響を与えます) ただ、タイガーの影響でプロレスラーを志す若者は後を絶たず、結果としてプロレス業界を力道山・アントニオ猪木に次いで盛り上げた人物といえるのではないかと思います。諸説あるのは重々承知ですので文句がある人は一緒に飲みながら語りましょう。 ちなみにプロレスファンなら最近まで現役だった獣神サンダー・ライガー選手をご存知かと思うのですが、そちらも永井豪先生の原作との公式タイアップで生まれたキャラで、そちらも名に恥じぬ豪腕・スーパースターぶりを発揮し、私も含め多くのファンを魅了し続けた名選手でした。 というわけで脱線しまくりですが、漫画のほうでも色々とあります。 孤児院で育った「伊達直人」という主人公が、「虎の穴」という悪のレスラー養成所に攫われて(スカウトだっけな)訓練して殺人拳を学んで覆面レスラー(悪役)としてデビューするところから始まります。 虎の穴での修行は常軌を逸したもので、伊達直人は自分と同じような境遇の孤児たちにつらい思いをしてほしくないと願い、ファイトマネーを孤児院に投げ入れていくのですが、それが虎の穴からは裏切り行為とみなされて虎の穴からの刺客たちと戦う羽目になる…という流れだったと思います。違ったらごめんなさい。 ただ、その「伊達直人」という名義で幼稚園や保護施設に匿名に近い形で莫大なお金を寄付する人が度々現れているんですよね、現実に。 2005年だか2007年だかぐらいにもあったんですが、当時はすでにTwitterが生まれていたので割と話題になったのを憶えています。 まぁ何が言いたいかというと、本当に全国のちびっこ達の心を掴んだ作品であり、そのちびっこたちが大人になって力を得た結果として慈善事業が潤ったりプロレス業界が潤ったりしていて、色んな所へ波及しているのがわかるんですよね。 漫画に限った話ではないですが「本当に素晴らしい作品」とはこういうのを指すのだろうな、という話でした。 長くなりすぎたのでこの辺で。正直絵が古いのは否めないのですが一度読んでおくとためになるかもしれませんよ!

世界は終わっても生きるって楽しい

滅びた世界で「生きること」を全力で楽しむ旅路 #1巻応援

世界は終わっても生きるって楽しい 鳥取砂丘
sogor25
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文明が滅び、"赤い霧"という謎の自然現象に覆われた世界。 そんな世界を、大きなハムスターのような生物・ヤゴ、そして球体の浮遊する機械・メイとともに旅する少女ヤコーネの物語です。 いわゆるポストアポカリプスの世界を描いてる作品で、1巻の段階で人らしき生物は主人公のヤコーネ以外には見当たりません。その代わりに人間を襲う未知の生物がたくさん現れてヤコーネたちの行く手を阻みます。そんな何が起こるかわからない状況を潜り抜けながら彼女たちは旅を続けています。 ヤコーネたちの旅に大きな目的はなく、強いて言うなら「生きること」を目的にしているように見えます。ただ、その旅では困難はあれど決して悲観的なものではなく、タイトルにある通り、滅んでしまった世界を旅しながら全力で「生きること」を楽しんでいる、そんな印象を受けます。 また、不思議な生物が多く出てくる作品ですが、主人公のヤコーネもまた私たちが思っていた"普通の人"ではないような描写が徐々に見えてきます。もしかしたらそのあたりに、滅んでしまったこの世界全体の謎がヒントが隠されているのかもしれません。 純粋にポストアポカリプスの世界観だけでも楽しめる作品ですが、この世界が滅びた謎についての考察もできるし、それ以上にこの厳しい世界観の中で見せるヤコーネたちの「生きること」対してとにかく前向きな様子に、読んでいて不思議と明るい気持ちになれる、そんな作品です。 1巻まで読了

殺し屋ちゃんと死なないターゲット

殺し屋の少女と不死身のマフィアの不思議な同居生活 #1巻応援

殺し屋ちゃんと死なないターゲット 古賀由人
sogor25
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幼い頃から教育を受け凄腕の殺し屋となった少女メメント・モリ。彼女がターゲットであるマフィアのボス・レオナルドの首を落とした場面から物語が始まります。レオナルドの部下たちが乗り込み、敵討ちをしようとメメント・モリに銃口を向けるのですが、次の瞬間、切り落とされたレオナルドの首から白煙が上がり、彼の体が元通りに再生されます。これは彼自身も知らなかったようなのですが、実はレオナルドは何度殺しても再生する不死身の体の持ち主だったのです。 その後、何度もレオナルドのことを殺すメメント・モリでしたが、その度に彼は生き返ります。 依頼を遂行するまでは帰れないと言い、彼の館に居座るメメントモリ。そんな彼女に対してレオナルドは、彼が死にはしないけれど不老であるわけではなく「ヨボヨボになっても死ねないなんてかっこ悪いだろ」ということで彼女に自身の殺害を自ら依頼します。そんな奇妙な縁でメメント・モリがレオナルドやマフィアの一味と共に暮らし始めるという物語です 暗殺のターゲットであるレオナルドはマフィアのボスなので、善か悪かで言えばおそらく悪の側の人間だと思うのですが、違法な薬物は取り扱わない、自身の利益となるための殺人はしないなど一本筋の通った人物として描かれています。そして屋敷に居つくことなったメメント・モリに対しても自然とマフィアの一員、仲間であるかのように扱い始めます。 そして、元々は殺し屋として徹底した教育をされており、任務のためなら自分の命を惜しまないというメメントモリだったのですが、レオナルドたちと暮らしていく中で、1人の人間として扱われることとで徐々に人間らしい感情を獲得していくという物語にもなっています。 なので、殺し屋とマフィアと言う非日常的な登場人物ばかりですが、いわゆる疑似家族もののような読後感のある作品でもあります。 2人が同居する目的はあくまでメメント・モリがレオナルドを殺すことにあるのですが、それを忘れてしまうほどの関係性が二人の間に構築されていきます。今後、2人の関係性がどのように変化していくのか、そしてレオナルドが改めてメメント・モリに依頼した彼自身の殺害という任務がどうなっていくのか、ハッピーエンドもバッドエンドも想像できるからこそ今後が楽しみな作品です。 1巻まで読了