旅とごはんと終末世界

メイド服ロボ×義手犬、出会いの旅

旅とごはんと終末世界 文ノ梛
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

自己を形作っているのは、それまでに出会った人々なのかもしれない。それが失われる事を「輪郭が失われる」と表現するこの作品、かなり深くて優しい作品である事は保証します。 メイド服を着た少女型の機械生命体・蘇芳。AIより人に近い、自立した思考を持ち学習する彼女は、自分を作った設計士=ご主人様を探すべく、犬のミュートと共に旅をする。人語を話し、機械の義手を持つミュートは頼れる存在。蘇芳の成長を見守ります。 旅をするのは、多くの人が死んだばかりの終末世界。残された文明は高度だが、維持が間に合わず、かなり崩壊している。そんな中で印象的なのは、ごはん大好きな二人の食事。 食料調達から調理まで、食事は蘇芳の担当。ミュートも感心する腕前で作られる料理は、旅の途中で出会う人達にも振る舞われます。 出会う人達の様々な事情。ひと月ほどの間に出会ったほんの少しの人達は、ご主人様しか知らなかった蘇芳に人との繋がりと思い出を与えてくれる。一方、見守るミュートに去来する思いは……? 3巻の間にしっとりとした世界観と様々な思索の種が埋め込まれ、蘇芳とミュートの物語もこれ以上ないくらい切なく温かく、充実の一作でした。

封神演義

唯一無二「フジリュー」というセンス

封神演義 藤崎竜
六文銭
六文銭

まず、皆思うのが、巻数を重ねるごとに 「絵柄変わってない?」 ということだと思います。 最初のほうはシュッとしているのに、だんだん靴とかガンダムみたいになっていきます。 本題。 小さい頃どハマリして再読。 今でも、最後にかけて畳かける摩訶不思議な展開は、ドラッグやっているかのような中毒性があります。(ドラッグやったことないけど。) 中国の古典怪奇小説『封神演義』を原作としながら、作者の類稀なるセンスによって大胆にアレンジしたところが、本作の魅力だと思います。 SF、ファンタジー、ギャグ、バトルの要素を取り入れつつ、ちょいちょい美形キャラも出して…といった上質な少年漫画として仕上がってます。 自分自身、『史記』における『キングダム』同様、 有名原作を「忠実」に再現したから面白いわけではないと常々思っているんですね。 同じ題材でも、ストーリーの構成や演出、登場人物のキャラ付けなど、作家によって異なりますよね。 そこが、ポイントなのだとしたら、作者のもつ独創的発想と幻想的なデザインに、摩訶不思議な古典小説が、見事にマッチしたからでしょう。 本作がここまでヒットしたのは、そこにあると改めて思いました。 余談ですが、何年たってもスープーシャンは可愛いっすね。

刻の大地

夜麻 みゆき の世界

刻の大地 夜麻みゆき
サミアド
サミアド

夜麻みゆき先生の代表作です。 異世界『オッツキイム』を主人公達が旅します。 初期作「レヴァリアース」の数年後が舞台です。 「レヴァリ〜」も名作ですが荒削りな部分があるので、刻の大地を読んで気に入ったらレヴァリアースも読む、という順番が良いと思います。 とにかく絵が良い!カラーイラストが超綺麗! 青い空や水、黄昏や薄明かりの描写が素晴らしい。 当時のエニックス系では「ARIA」の天野こずえ先生と双璧だと思っています。 キャラクターも魅力的ですが好き過ぎて語りきれないので省略します。 異世界の設定を漫画で上手く表現していて、オッツキイムに浸れます! 食事や風景、建築や風習など見ているだけでワクワクします! プロトタイプ版「幻想大陸」もギャグ漫画寄りですが名作です。 体調不良で未完となっていましたがクラウドファンディングで十数年ぶりに続きが刊行されました! ブランクのせいか、正直、絵や内容は昔の方が好きでした… でも、一度は諦めた物語の続きを読ませてくださった夜麻先生には心から感謝しています。 画像は主人公の1人「カイ」の回想シーンです。 勇者ザードの数少ない出番。 個人的に勇者と言えばザードか騎士ガンダムです。