133cmの景色
現代を生きる痛みを強さと優しさに変えて #1巻応援
133cmの景色 ひるのつき子
兎来栄寿
兎来栄寿
「生きづらさ」。 一言で表すのであれば、本作のテーマはそこです。 多くの人が感じずに済んでいる痛みを受けながら生きている人に、凛々しく優しくエールを送る作品です。 バンチが送る女性向け新レーベル「バンチコミックスコラル」の先陣を切って送り出されたこの『133cmの景色』は、読切時からクオリティの高さで話題沸騰でした。そして、すぐさま連載化し本日単行本も発売となりました。女性向けレーベルとなってはいますが、連載は『月刊コミックバンチ』で行われており、内容的にも男女問わず広くお薦めしたい内容です。 133cmの身長のまま、小学生から成長が止まってしまい25歳になった主人公・華。 そして、華の後輩であり、ある事情を抱える岩見。 食品会社に勤める彼女たちを中心とする、群像劇です。 華は、低身長であることで過去から現在に至るまで数々の心無い言葉のナイフを刺突されて生きています。困ったことに、ナイフを突き立てる側の人間は自分の放つ言の葉が凶器となって人を傷つけていることに極めて無自覚です。しかし、そんな経験を積んできた華ですら、ときに人を傷つけかねない言葉を無意識に発してしまう。そんな人の世のリアルを的確に描いています。 それでも、 ″人の価値観とか苦労とかって 目に見えないから汲み取るのは難しいよね だから損とか得とかって一面的に見て判断してると いつか他人も自分も傷つけちゃうんだと思う 私はどうせなら自分や他人の「無い物」探しを するんじゃなくてそれぞれの良い面に 目を向けていきたいな″ という華。毎日の仕事が戦場であるという彼女。同じように傷つけられる人に手を差し伸べる彼女。主人公としてあまりに気高く、推せます。 岩見との絶妙な関係性が進展していく様子はもちろんのこと、周りの登場人物ひとりひとりにも味があり、それぞれの生きづらさを抱えているところも堪りません。そうした人たちが集まってできている社会というものの複雑さ・難しさを感じながらも、読んだ後には一欠片の優しさを得られる作品です。 非常に現代的・令和的な物語で、今年の新作で推したい作品ベスト10には確実に入る、大注目作品です。 バンチ編集部へのインタビューでも本作を取り上げておりますので、ぜひこちらも。 https://manba.co.jp/manba_magazines/23852
強い女アンソロジー
これは良いアンソロジー
強い女アンソロジー マキヒロチ 西島大介 カワハラ恋 ひるのつき子 伊藤イット 藤松盟 atheko
六文銭
六文銭
きれいなお姉さんは好きですか? なんてキャッチコピーありましたが、個人的に 強い女性は好きですか? のほうが、食い気味で反応しそうな私です。 きれいなお姉さんよりも、強い方が好きです。 『無限の住人』の乙橘槇絵しかり、『進撃の巨人』ミカサしかり、強い女性のほうが魅力的なんですよね。(二人共美人だろが!と言われればそうなんですけども!) なので、本作はタイトルからして俺得でした。 軍人、人外、令嬢、色々なバリエーションで肉体的・精神的に強い女性がでてきます。 基本1話完結形式で読みやすく、オチも予想外なものが多くて楽しめました。 そんな中で特に異彩を放ったのは『いつかティファニーで朝食を』のマキヒロチ先生のお話。 これまでの流れが、戦うとか信念のある女性が多く登場していたなかで、この話だけ、彼氏や職場の人間、誰に対しても自分の意見を言えない女性が主人公。一瞬、 これが強い女性なのか? と最初は面食らいましたが、よーく考えると、この我慢ができることも強さであるのかな?と考えてしまいました。 言いたいこと言いたいように言いまくるだけが強さではないんだと、言いたいことをグッとこらえる我慢も強さであるなら、この主人公もまた強い女性なんだと思いなおしました。 真意は不明ですが、自分はそうとらえました。 このような感じで女性の色んな角度の強さを描いた作品で、とても興味深く読めました。 同じテイストで2巻でて欲しい~。