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萩埜まこと
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萩埜まことの作品の感想・レビュー
6件
1粒で5度美味しい短編集
萩埜まこと短編集 どこかの星のふたり 萩埜まこと
兎来栄寿
「『熱帯魚は雪に焦がれる』の萩埜まことさんによる短編集」と言うと百合を想像されるかもしれませんが、雑誌『青騎士』に連続掲載された作品群はさまざまなタイプのお話があり、そのどれもが上質です。 西洋が舞台で、作家と少女との出会いから始まる「窓辺のリノア」。 田舎の高校生たちの淡い青春を描いた「波よりもおだやかで、雲よりも速く」。 スタイリストになりたての青年が、初めて美容院に来た女子高生との接客中に自分が美容師になった動機となる復讐について語る「髪結いの娘」。 神社に住む少年が、人生を諦めそうになっていたダメな大人に神様のフリをして援助を行う「神様ごっこ」。 人類が滅んだ後の宇宙を舞台にしたSFでありながら、ゴーストというファンタジックな概念が物語の鍵になる「どこかの星のふたり」。 時代も場所も設定も多彩で、ひとつとして似通ったものはなく1冊の中で多くの味わいを楽しめる様はまるでフルコースの料理のようです。 「窓辺のリノア」が『第七天国』から着想を得ていることが幕間の解題で明言されていますが、『熱帯魚は雪に焦がれる』も井伏鱒二の『山椒魚』をモチーフにしていたように、他の作品から取り込んだものを自分の中で咀嚼して独自の物語として出力する力に長けていると感じました。 どの作品も読後感の良さが共通していて、多くの人に受け入れられ易いタイプの作劇であるとも思います。個人的にはすごく大事に描かれた感のある表題作が最も好きです。 2022年に出た短編集の中でも、特に良くお薦めしやすい1冊です。
宇宙に残された生命の痕跡を探して
どこかの星のふたり 萩埜まこと
名無し
人類が滅んだとされる宇宙で生命の痕跡「ゴースト」を実体化する任務を与えられた人型アンドロイドのエレク。宇宙を彷徨し、さまざまな生命体のデータを集めていくなかで、ゴーストの少女と出会って心の交流が描かれます。 相棒の球体アンドロイドのエータが意外と血の気があるのがなんか面白かったです。素朴な雰囲気で描かれたSFでした。
孤独の岩屋を抜け出して
熱帯魚は雪に焦がれる 萩埜まこと
野愛
父と離れ、東京から愛媛に引っ越してきた転校生の小夏。 美人で成績優秀、完璧すぎて近付きづらいと周囲から思われている小雪。 それぞれの孤独を抱えた2人が寄り添い合い、心を通わせていくお話。 寒いほど独りぼっちだった2人が、水族館部でふたりぼっちになる。 お互いの存在が支えになって世界が広がっていくけれど、わたしだけのあなたでなくなってしまうのが寂しい。 傍にいてほしい、寂しい、一緒にいてほしい。 そんな気持ちに気づくまでに、ちゃんと伝えられるまでに、たっぷり時間をかけてしまう不器用な2人が愛おしい。 そんな物語じゃないと井伏鱒二は言うかもしれないけれど、孤独の岩屋を抜け出しても山椒魚と蛙は寄り添い続けられるんだと伝えたい。 光の中で笑い合う2人の姿に涙が止まらなかった。心が洗われる作品。
青年はなぜ美容師になったのか・・・
髪結いの娘 萩埜まこと
名無し
※ネタバレを含むクチコミです。
寄り添う孤独と瀬戸内の光 #完結応援
熱帯魚は雪に焦がれる 萩埜まこと
あうしぃ@カワイイマンガ
愛媛県大洲市長浜を舞台とするこの作品は、井伏鱒二の小説『山椒魚』をモチーフとした作品でもある。 小説の〈山椒魚と蛙〉となぞらえられる、二人の女子高生。閉じ込められるのは、孤独という名の岩屋。そこは暗く冷たいが、二人の外に広がる光景は眩しい。 穏やかな瀬戸内海は、いつでも心を癒してくれる。高校の水族館部の魚や水生動物は愛らしい。そんな光景の中で、孤独を抱える二人はお互いの孤独を知り、不器用に身を寄せ、言葉を交わす。 寂しいという感情を持つ人が「寂しい」と人に告げる事の困難さが描かれ、これは私の物語だ、と思わされる。 しかし私は、その先の光景を知らない。 二人が「寂しい」を告げた、その先の光景はとてつもない煌めきに満ちていて、私は己が体験した事の無いそれを、少しの寂しさと、大きな喜びで眺める。 他にも所謂「優等生」が抱く重圧や孤独について、私の実感と非常に近い物があり、これが描かれた事で私も少し救われた気がした。 二人の関係性に恋愛だの友情だの、区分をつけようとすると最後まで混乱するだろう。この二人はこの形なのだ。そんな事よりも、暗い孤独に共鳴する全ての人に柔らかな光を見せてくれるこの物語を、そのまま丁寧に享受したい。
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萩埜まことの作品についての雑談・質問
1件
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1
6ヶ月前
ネタバレ
雑談
窓辺のリノア 萩埜まこと
失踪中の作家が、不思議な少女リノアと出会う
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