心中するまで、待っててね。
これを純愛と呼ばずしてなんと呼ぶ
心中するまで、待っててね。 市梨きみ
sogor25
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子供のころの"ある記憶"を失くしてしまっている主人公の福太。人当たりのよい好青年のように見えてどこか他人に対する関心が薄いようにも見える彼の前に、その"ある記憶"に関わる、小さい頃大好きだった葵兄ちゃんが現れる。しかし福太はある違和感に気づく。福太が小学生のころ、葵は中学生。それなら今は年齢的にはアラサーのはずなのに、本人曰く「なぜか突然若返って」当時とほぼ同じ姿だったのだ。 という、若干のファンタジーっぽい導入から始まる作品。しかし、作品を読み進めていくと、ファンタジー要素は作品のただの一部分であり、それどころかそれ以外の全ての要素が物語の枝葉末節に過ぎず、福太と葵、2人の"純愛"だけが物語の中心なのだということを見せつけられる。葵が"若返った"理由にも福太がの幼少期の"ある記憶"が欠落しているのにももちろん理由があり、私なんかはその仕掛けの巧みさにも魅せられてしまうのだけど、最後まで読むとそれすらも2人の物語の前には路傍の石ほどの価値もないのだと印象付けられる。上下巻、全10話で過去と現在を繋ぎながら一気に駆け抜けていく、2人の狂的なまでの純愛の物語。 上下巻読了

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